彼等に精神的糧を送れ!

満鉄図書館史』(村上美代治)という自費出版の歴史研究書をふいと読む機会を得た。
そこに掲載されていた、満州図書館協会による「開拓地慰問図書雑誌」を募る文書が興味深かったので書き写した。対米開戦後の1942年です。

精神的糧は開拓地へ
 物質的糧は開拓地より
 人はパンのみで生きるものではない、食糧生産にいそしむ鍬の戦士は、食には厭いているが、精神的糧に飢えている。彼等に精神的糧を送れ!物質的糧は彼らが確保してくれているのだ。精神的糧は、宗教の福音のみではない。日本精神の源泉たる尊き古典、深遠なる哲学書、滋味溢るる文学書、該博なる科学書いづれか精神的糧食たらざる。更に少国民の愛好する内地の絵本、お囃話集は、精神的母乳ともいふべきものだ。長期戦を予想される大興亜戦争を勝ち抜く為めには、第二の鍬の戦士を立派に育て上げることが絶対に必要だ。図書を開拓地へ送れ!送つて彼等の爐邊を賑はせ!興亜の大国民は、話題に富む爐邊から生れる。書物を開拓地へ送れ!食物は開拓地より溢れ来るであらう。