「思い出のマーニー」のわかりにくさ(ネタバレ)

ええと、いきなり種明かしのタネから時系列順にたどっていく。主人公がまだ幼い頃、唯一の身内だった祖母(=マーニー)に少女時代のことをよく聞かされていた。祖母が一番好きな場所だという"湿っ地屋敷”の写真も目にしていた。時を経て現代、療養のために訪れた田舎町でその屋敷を見たことで祖母の話を思い出す。ただそれは「祖母からこんな話を聞いていた」という形ではなく、想像上の友人、同世代の少女・マーニーとの出会いとしてだった……というストーリー。

なんだけど、マーニーが想像上の友人だというのはストーリー中盤で当の主人公がはっきり言っちゃってるのね。となると見ているほうとしては違った真相を想像するわけですよ。ありがちなところで幽霊であるとか。ミスリードといえばミスリードなんだけどこれはアリなのか?

それと、ちょっとズルいのが「確かに現実に起きている」場面と「マーニーと二人きりだから現実とも夢とも判じ難い」場面があるのはいいとして、そのうえ「明らかに夢の中のこと」の描写があること。これが話を分かりづらくしている。さらに「明らかに非現実だがマーニー以外の人物もいて確かな現実感を伴っている場面」まであって、「どこまでが主人公の幻想なのか」の描写のルールが確立されていない。しているかもしれないけど、かなりわかりにくい。

その上でさらに、マーニーが想像上の友人でなく独立した人格であることを示すように、終盤に入ると「弱気なマーニーを主人公が支える」という関係性の逆転が生じてくる。

なのに最後の最後で明かされるのはやっぱり「おばあちゃんに聞かされた昔話の記憶から再構成された人物でした」という真相で、だから「そうだったのかー!」とハタと膝を打つことは無く、「あ、そうなの?」とモヤモヤしたままなのね。

ただ、これもバレ無し感想で書いたとおり理屈では成立している。マーニーが主人公に依存するのは、おばあちゃんの昔話に出てきた彼氏に主人公が自己を投影しているからで、そういう関係に憧れているから〜で、ちゃんとスジが通っていて、だから評価が難しい。

結局、わかりにくい決定的な理由は「演出とか語り方が「お約束」を踏まえていないから」で、それは巧拙でいえば特段に拙ではないんだけど、出来不出来をいうとやっぱり不出来……という、あぁなんかホントに残念な映画だ。