「マーズ」(横山光輝)

現在公開中の某話題作、「80年代シンセミュージックなセンスのBGMでクライマックスぶち壊し」と聞いて俄然興味がわいてきた。
そのタイミングで東京MXで始まったのが『六神合体ゴッドマーズ』である。

♪ゴーゴッマッ うちゅうを(♪ぽょ〜ん)かーけーろー(♪ぽょ〜ん)

ああっこの ♪ぽょ〜んが! ♪ぽょ〜んがっ!!

つーか「風の谷のナウシカ」のBGMなんて……「なんて」というと語弊があるがどうしても久石譲でなければならない理由はなく、当初の予定通り細野晴臣でも、あるいは姫神あたりでも、それこそ若草恵でもよさそうなもので、その出発点というか運命の分岐点から久石譲は過大に評価され続けているような気がする(ここで当然、喜多郎の名も思い浮かんだがちょっとググってみたらこれまたかぐや姫の物語であるところの「1000年女王」のBGMを手がけていたのね)。

某話題作はそのうち観るか観ないかのどちらかとして、「ゴッドマーズ」もただの前振り、本題は「マーズ」の話。

マーズ 前編

マーズ 前編

マーズ 後編

マーズ 後編

漫画「マーズ」は、2005年にコンビニ売り用に再編集された際に購入。「ゴッドマーズ」に原作としてクレジットされているものの一部の固有名詞以外まるで無関係です。なにせ六神は地球の敵なのだから。ついでにいうとガイアーと六神なので「ゴッドマーズ」より一神多い。

この「マーズ」ですが、マーズが死んだら地球壊滅! ガイアーが破壊されても地球壊滅! そのうえ敵の六神全て倒しても地球壊滅! だからといって六神をほったらかしにしても色々壊滅! 知恵を絞って何とか地球壊滅を回避したけど最後の最後にマーズの意志でやっぱり地球壊滅! という素晴らしく酷い話。

全体としては面白い作品なんだけど、ラストについての感想はぶっちゃけ「横山光輝ほどのベテランでもモロに「デビルマン」の影響を受けちゃったんだなー」の一言です。それも、ヒロインがいつの間にかいなくなっちゃったから、「デビルマン」のような「いまの人間にまもるべき価値があるか―― ない!」ときて「おれには…まもるべき人間がない…… いや……いる! おれにはまだ まもるべき人がいる!」とひっくり返す葛藤や、さらにその上のアレという波乱…絶対的な絶望を抜きにしていきなり地球(というか人類)を壊滅させてしまう。どうにも唐突感が禁じ得ません。

以前、「子供の頃に物語を考えて、話をまとめきれないときの締めくくりは『つぎの日ちきゅうがばくはつしておわり』が定番だった」という旨のことを書きましたが(2009年10月8日付2010年1月29日付)、「マーズ」はまさにそういう感じです。ただ、横山光輝の名誉のために書きますが、ちゃんと六神全てを倒したうえでの結末ですから、決して展開に困って投げ出したわけではありません。

人間に対する絶望と終末観はやはり70年代半ばに広くみられた「時代の精神」というべきもので、「マーズ」のラストは単純に「デビルマン」に影響されたのではなく、時代の精神に中てられたとみるのが妥当かもしれませんね。

神世紀伝マーズ(1) [DVD]

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だいぶ後になって製作されたアニメ版ではラストが改変されているそうですが、どういう改変か容易に予想が付く。どうせあれでしょ、原作では途中で忘れ去られたヒロインに妙に存在感があって、マーズが情に絆されちゃうんでしょ?