『80年代マイコン大百科』

以前の思い付き、「攻殻機動隊1983くらい 少年マガジン掲載版 学園編」(→7月1日付エントリ)について、「今日のケータイやスマホ並に、パーソナルなコンピュータを1人1台所持している未来の学園なんだけどモノはMSXで、皆があれを小わきに抱えて登校してくる絵が思い浮かびます」などと書いていたが……。

リアルの1983年にもこんな光景があったのであった。

つってもあくまで広告であって、実際にこんなふうにMSXを提げて登校していた子なんているはずもないが、日立のH1には現にキャリングハンドルが付いてたのである。この広告はまさに「コンピュータが普及したちょっと未来」のイメージなのだ。
ちなみに工藤夕貴はこの約一年後、手にぶら提げるものをコンピュータからヤカンに変えて♪お〜湯をかける少女〜 となって走っていた。

さて、先の記事の出典は先日購入した『80年代マイコン大百科』(佐々木潤・総合科学出版)。

80年代マイコン大百科

80年代マイコン大百科

この本、基本的にMSXは取り上げていないのだが(いずれMSXだけで一冊にまとめるのではなかろうか?)、日立のHシリーズの広告だけは別格で3ページを割いて紹介している。

MSX抜きでどんなハードを取り上げているかといえば、NECのPCシリーズ(だいたいPC9800シリーズが9821になる前まで)、シャープのMZ〜X1〜X68000シリーズ、富士通のFMシリーズ(ギリギリでTOWNSが入る)のいわゆる御三家はほぼ漏らさず紹介(それでもFM-Xが無いあたり、やっぱり後でMSXだけの一冊を出すんではないかと)。ほかに、PC98コンパチのエプソンのPC-286・386シリーズ、そして「そのほかのパソコンたち」としてひとくくりで、日立のS1や東芝パソピア、三菱のマルチ、バンダイRX-78セガSC-3000、ソードM5などまで紹介している。

ここまででもうお腹いっぱい感なのだが、「HARD編」は全7章のうちの第1章に過ぎないのだった!! 以下第2章「雑誌編」、第3章「GAME編 1980-1984」、第4章「人物編」、第5章「GAME編 1985-1989」、第6章「ADULT GAME編」、第7章「そのほかの80年代トピック編」と続く。

基本的には、著者が所有している当時の雑誌及びチラシを引用して各テーマごとに整理した本。パソコンやソフトの現物の写真は載っていないし、関係者インタビューなども無いから、その点では物足りない。とはいえ、当時の記事や広告を取り込んでテキトーに貼って紙面を埋めました〜などという手抜き本では決してない。キャプションや本文は非常にディープで詳しく「わかっているねぇ」と唸らされる内容で、かなりの読み応えがある。ていうかまだ読み切れてないです。
そうそう売れる本でもないと思うが、これが売れれば続編もありそうなので、そのために皆さんにも買っていただきたい(ってオイ)。

ていうか続編は「MSX大百科」でひとつ。私は所有したことはないんだけど、MSXの百花繚乱というか一山当てるべぇという各メーカーの山師根性というか、基本仕様が共通(しかも入門機レベルの性能)なのに無理矢理差別化を図っている混沌というか……、とにかくあの状況はいま振り返ってみても非常に面白い。