「たまこまーけっと」の話

毎週見ているのに感想の書きようがないのが「たまこまーけっと」。ぶっちゃけ面白くないんだけど、作品の狙いどころというか成り立ちに興味があって視聴をつづけている。あと朝霧さん萌え。

オバQもの」……と呼ばれているわけではないが、漠然とそういうジャンルがある。古くは「オバケのQ太郎」、新しめで「ケロロ軍曹」とか「侵略!イカ娘」とかいった【異世界からの来訪者が同居することになり、日常がハチャメチャになる】というパターンだ。ジャンルとしての呼び名は無いが思い付く作品は山ほどあるし、少々装いの異なる「うる星やつら」などもその派生種といえるだろう。

たまこまーけっと」第1話の率直な感想は、「オバQものなのに【異世界からきた同居人】のキャラが弱過ぎる」だった。オバQが「♪なにもできないけれど消えちゃうんだよ〜」ならばデラは「消えちゃわないオバQ」、つまり何もできないだけのキャラと思えたし、実際そうだった。

話が進んでもそのままだった。

デラはまったくもって「消えない飛ばないオバQ」というか「ショートカットのイカ娘」というか「ケロボールを持ってない軍曹」というか……。いや、それどころでないのだ、そもそも話の中心にならないんだから。ふつうなら、「デラという異邦人によって主人公たちの日常は一風変わったものになる」という話を組み立てるとこなのに、「デラという異邦人が同居しているのに変わらぬ日常を送っている」話にしている。ちょっとさじ加減を変えれば、これってホラーだよ。

チョイが出てきた回なんか、ふつうなら「デラが町の一員として受け入れられていて安心する(あるいはデラが虐げられていると誤解して話がこじれる)」結末に向かうパターンなのに、デラがどう扱われているかはほったらかしでひたすら町の人たちそのものの善人性を描いていった。

強固に頑迷なまでに人情味あふれる商店街……。異邦人がいようと怪生物がいようと、その一切を飲み込んで平常運転を続ける彼らの日常……。

やっぱりホラーだ。

それはそれとして。

私は「けいおん!」が「空気系」だというレッテル付けには未だ納得がいっていない。ストーリーの骨格はあくまで「何にも打ち込めなかった主人公が軽音楽と出会い、仲間たちと武道館を目指して、ついには自分たちの武道館ステージに至る話」という古典的な部活モノであり、練習の描写がないとかストーリーに波乱がないとかいうのは単なる表層に過ぎないからだ。

だからおそらく「たまこまーけっと」も同様で、「オバQもの」の骨格にいわゆる「空気系」の皮を着せた作品なんだろうなぁ……と思いながら見つづけている。デラが何もしないのはあくまで表層のことで、未だ見えない何かしらの骨格があるのだろうと。

……ここまでくるともうあんまり期待してないけどね。たまここそ王子の后だった! という最後のひと波乱さえもデラとは無関係に起こるのが逆に凄いというか、物語の商店街もとい焦点がどこにあるのか未だにわからない。



と書き上げたところで、以前にも何か同じようなことを書いた気がした。
あれだ、「それ町」だ。

「突飛な事を書こうとしてもダメ」といってるくせに、宇宙人だの幽霊だの雪女だのメッシーだのがひょいひょい出てくるわ、ヒロインは一度死んでるわ(結果的には臨死体験だったが)で突飛な事もかなり多いんだよね。でも、それらさえも「ごくありふれた楽しい毎日」は呑み込んでしまう。

特に5巻は裏表紙で「今巻は日常の中に実は潜む事件の数々。その事件は実在するのだが、歩鳥の日常は相変わらずなのだ」と書いているくらいで、かなり意識的に「日常 対 突飛な事」をやろうとしている。

……そこまで強固な「日常」って、ひょっとして恐怖すべきものじゃないか…?

http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20090104

それでも町は廻っている」はかなり意識的に「強固な日常」の話をやっていますが(だってタイトルからして…)、さて「たまこまーけっと」はどうですかね?