「ルパン三世 風魔一族の陰謀」

アニマックスで放映されたのを録画視聴。いやー凄いすごい! この映画がキャスト変更の一点でしか話題にならないというのは(正直私もそれしか知らなかった)かなりもったいないです。今回のTV放映を機会に再評価されてほしいもんだ。

何が凄いって、なんといっても温泉旅館を走り抜けるカーチェイス! 「温泉街を」ではなく、旅館の中をだよ!? ふつう思い付かないし思い付いても映像にできないよこんなの。

その前の、田舎の商店街を走り抜けるカーチェイスも無茶で素敵。実写だとたとえ映画でも「これ数十人単位で人が死んでるよね…」と思ってしまうが、アニメ故の誇張とリアリティ不足を巧いことコントロールして、抱腹絶倒の派手な見せ場を作っています。モブのちょこまかとした動きなどは、わかりやすい例でいうなら宮崎駿版「名探偵ホームズ」的でした。ここらへんは「監修 大塚康生」の力でしょうか。

脚本は全く面白みに欠けるけれど決して不出来ではなく、苛立つことなく見ていられます。一言でいうと「ルパンたちと悪党一派との秘宝争奪戦」で、極論すればそれ以上のものは何もない。けれど、だからこそアクションに意識を集中できるのだから、これはこれでアリでしょう。

……五右衛門の結婚とか銭形の出家&還俗とか、それぞれの人生に関わる一大事を盛り込んでいながら物語上未消化で終わったのはどうなんだとか、ずっと五右衛門と行動を共にしているのに目立った活躍はなく足手まといにもならない、ヒロインが空気キャラでいいのかとか(終盤に一応、無茶な覚悟で五右衛門を救う場面があるんだけど、そこに至るまでにメリハリのメリが無いから映えない)、そらまぁ言いたいことはあるけどね。

ただ、舞台がよく変わるのに「瞬間移動」が無い(はるかに先行していたはずの敵や別動隊に、いつの間にか追いつけているというケース)とか、キャラクターそれぞれの行動原理にブレが無い(逆に言うと成長や改心も無いんだけど)とか、そういうところがちゃんとしているから、すんなりと入ってきます。

あと割とどうでもいいがトムスはいいかげん、「東京ムービー新社」だったクレジットを「トムス・エンタテインメント」に変える悪癖を改めろ。どうしても社名をアピールしたいなら、「東京ムービー新社」の下にスーパーで「現・トムス・エンタテインメント」と加えるとか、やりようがあるだろ。