マイトガインに三次元人なんて登場していない

非公認戦隊アキバレンジャー」11話について、「まさかのマイトガイン展開」とかいう感想を見ると「最終回のBパートだけをもって「◯◯展開」と抜かすか!」とイラッ☆とくるわけですが、まぁ連想するのは当然だろう。

ただ、「勇者特急マイトガイン」本編には三次元人なんて登場していない、とわかっていないらしい人が結構なボリュームで存在するのが気がかりだ。

深読みでもなんでもない。ブラックノワール本人が「この私もただのゲームの駒だったか……。巨大な悪という名前の……」と言っている。

つまり、物語内世界にあって超常的な力を持ち、自分自身を三次元人だと思い込んでいただけで、実際には「巨大な悪(=三次元人)と名付けられたゲームの駒(=二次元人)」でしかなかった、というわけ。

舞人は、ブラックノワールに「真相」を明かされても「嘘だ」「俺たちはゲームの駒なんかじゃない」と真っ向から否定する。自分たちがいる世界をゲーム(二次元)だと思っていたのはブラックノワールただひとりなのだ。そのブラックノワール自身までゲームの駒ならば、メタフィクション的な言及はあっても構造はメタフィクションではない。

もちろん、青砥(=タカラの本社がある場所)の工場でいつの間にか新しいロボットが次々に作られているとか、全ロボに活躍の場がある総力戦が「クリスマスオペレーション」(=クリスマス商戦)だとか、そういう楽屋ネタは至る所にあるし、最終回でもエンディングに至って三次元世界が描かれる。

けれども本筋はあくまで、神を名乗る絶対者の支配に屈しない熱い正義とイノセンスが勝利する単純明快な娯楽作だ。正統派の、お約束どおりのヒーローストーリーなのである。それは最終回まで貫かれている(エンディングはさておき)。
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20050319

そういう本筋だからこそ、監督は「正義が理屈無しで勝てるのは絵空事だけ」と屈折してしまったのだろう。故に、ラスボスにあんな台詞を言わせてしまった。

だが、それもただ口先だけのことだ。話そのものは「三次元」を「四次元」に、「二次元」を「三次元」に言い換えても、何の問題もなく成立する。

「私は次元を超えてやって来た四次元人だ。この三次元世界の支配者、神と言ってもいい」

はい、このとおり。

マイトガイン」は確かにインパクトの強い作品だったし、そのメタフィクション性は高く評価されるべきだと思う。ただ、イヤミなほどに正統派の「正義は必ず勝つ!」物語を1年間描き続けた最後の最後に、ほんの一言だけ「三次元人だ二次元世界だ」と言っただけで、それがイコール「マイトガイン」だと思われているのは、ファンとして気持ちのよいものではない。