日本軍事史叢話

正月に宇都宮の東武古書市で買った松下芳男著『日本軍事史叢話』(土屋書店・昭和38年)読了。とりあえずメモだけ。
p19・「シベリア出兵金塊事件」 大正15年、シベリア出兵の戦利品である1000万ルーブル相当の金塊の一部が宇都宮に送られ、駅前の運送業者の倉庫に保管されていたが、放火事件の際に行方不明に。
p56・ラム(衝角)をつけない設計をした世界で最初の軍艦は二代目筑波。明治38年起工、大正6年1月14日、横須賀港内で火薬庫の爆発で沈没。
p92・原田宗助は明治時代の通弁(通訳)。大して英語も通じておらず、誤訳、悪訳して平気でいたという。
p110・君国一致という思想はあるが、軍人勅諭の「軍人は忠節を尽すを本文とすべし」のいう忠節とは「国家のためにつくすこと」であり、「天皇のためにつくすこと」という意味が無い。p269でも、勅諭の別の部分について、これと同様の混同があったことを指摘。
p123・大正5年11月29日深夜、東北本線の下田〜古間木(三沢)間で軍用列車同士の衝突事故が発生。
p126・鉄道連隊に依頼しての、演習による鉄道敷設は「建設者としてはそんなに思うほど経費が減らない」。
p232・屯田兵について「徴兵制度となったために、世襲制の武職を失った士族、その中でも朝敵となって削禄された東北諸藩の失職士族に、生計の道を与えんとしたことであった」と評価している。
 
日本軍の歴史についての本で、昭和38年時点で既に全てが過去の出来事だったから、いま読んでも古さを感じない。
しかし、「第三部 軍制叢話 第三話 北海道屯田兵」に限っては、北海道における自衛隊の現状を踏まえて「自衛隊屯田兵改編」を提唱し、具体的にその使命や制度に言及しており、執筆当時の時代性が感じられた。