ソニータイマー誕生

週刊ダイヤモンド』の特集が「さよなら!伝説のソニー なぜアップルになれなかったのか」なので買ってみた。ちなみにこれ、ストリンガーが会長職を退くとの発表(2月1日)より前に出た号(1月30日)で、表紙に「ストリンガー体制崩壊へのカウントダウン」と書かれている。もう1号前だったら、退任発表のときには新しい号が並んでいたわけで、実に絶妙のタイミングでの特集でした。
んで、特集の本題はすっ飛ばして、最後にゾロゾロっとまとめて書いてある「『SONYに思う心のつぶやき』 ソニーの現役幹部や社員、OB、そして一般ユーザーから寄せられた言葉」のひとつについて。

ソニーと聞いてまず思い浮かぶのは
「高くて壊れやすいソニータイマー」。(10代女性)

左ページの下のほうに、まるでオチのようにこう書かれているのだ。(10代女性)ってことで、編集者としては「今時の若い人のソニーのイメージ」をこれに代表させたつもりなのだろうが、どうなんだろう、そこまで新しい言葉でもない気がする。
ウィキペディアには「ソニータイマー」の項があった。

ソニータイマーSony timer)とは、ソニー製品の保障期間終了直後の故障が多いという噂から「ソニー製品にはタイマーが埋め込まれていて、精密に製品寿命をコントロールしている」のではないかという都市伝説で使われる造語である。英語圏では"SONY kill switch"と呼称される。
(略)
ユーザーがソニー製品のメーカー保証を過ぎた直後に頻発する故障に対して「まるでタイマーが組み込まれているようだ」という比喩を込めて使い出したのが最初といわれ、海外製品との競争がもっとも熾烈だった1970年代後半から多用されるようになったといわれる。

え? 70年代後半!!? さすがにそこまで古い言葉じゃないだろう。ていうか、同じページに書かれている「ソニーによる言及」は2006年、2007年。「マスコミでの言及」は2006年と2010年。いずれも2000年代後半だ。
そのうちの2010年の「デイリー・テレグラフ」記事には「ここ20年間にわたり、ソニーは日本で「ソニータイマー」という都市伝説に悩まされてきた」と書かれている。これが正しいならば90年代前半からということになる。
参考文献に上げられている『ソニー病』の、当該記事は「第2章 ネットから生まれたソニータイマー伝説」。ならばインターネットが普及した90年代半ば以降だろう。「1970年代後半から多用されるようになった」というのは、何が根拠なのか。
確たる根拠は無しに感覚だけでいうと、ベータマックスの敗色が濃厚になった80年代後半からソニーの企業イメージの失墜が始まり、90年代前半あたりに「ソニータイマー」の語が生まれたのではないか?
あるいは、セガマニアや任天堂ファンやFXに投資した人(意味が違う)たち、つまり8〜16ビットの時代から家庭用テレビゲームにこだわりのあった人には、ソニーとは「話題づくりだけがうまい小賢しい商売上手」という存在だったはずだ。1994年発売のプレイステーションについて、その初期故障につけ込む形で、誹謗中傷のパターンとして「ソニータイマー」が発生したのかもしれない、とも思う。