ビジネスとしてのプリキュア

大ヒット「プリキュア」に学ぶ子どもマーケット攻略法
プレジデント8月16日(月) 10時30分配信
 
3〜6歳の女児から圧倒的に支持されているキャラクターがある。日曜朝に放映されているアニメ「プリキュア・シリーズ」だ。ヒットの裏には、既成概念を超えたコンセプトと、親・子ども両者の思いを満たす細かな配慮があった。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100816-00000001-president-bus_all

ビジネスとしてのプリキュアがどのように成功を収めたのかの解説として、まとまりの良い記事ではあるが、東映アニメーションで聞いてきた話をそのまんま原稿に起こしただけなのだろう、なんの新味も無い。

作品内容に関する話が恐ろしく表層的なのは、まぁ仕方がないだろう。『プレジデント』といえばガマオくんやギリンマくんよりずっと上、カワリーノさんとかエターナルの館長が読むような雑誌なのだから。

しかし、女児ビジネスの解説記事としてもいささか踏み込みが甘く、「?」と思う部分が多いのだ。

最大の疑問は「購買意思決定をする人は主に母親」と書かれた部分。

理由は、購買意思決定をする人は主に母親で、彼女はシビアに判定するからだという。
とりわけ昨今、お母さん基準というのが大きな影響力を持っているという。お母さんのパッと見の印象、「可愛いか、可愛くないか」で決まるというのだ。もしもお母さんが「これ、可愛くないじゃん」と言ったら、幼児はそれに素直に影響を受け、「お母さんが可愛くないって言ってるから、可愛くないんだ」と思ってしまう。それゆえ、お母さんの視点、好みはきちんと意識して、モノづくりをしなければならない。

何を言っているんだ。母親は購買意思決定者ではなく、購買者そのものでしょ。3〜6歳の女児がおこづかいをやりくりして玩具を買うわけじゃないでしょ。「子供が欲しがり、親が買い与えるもの」ってのが玩具ビジネスの基本。だからこの話から読み取るべきことは、「お母さん基準というのが大きな影響力を持っている」などという自明のことではなく、「お母さん基準が幼稚化している」ことなのだ。

昔は、というか今でも基本はそうだと思うが、「子供の発育にとって有用であること」が玩具選びの基本だった。それこそが就学前児童が相手の玩具ビジネスの妙味だろう。『おジャ魔女どれみ』シリーズはそれが非常にわかりやすく、大雑把に言うと、「お店やさんのお手伝い」「赤ちゃんのおせわ」「お菓子づくり」といった調子で「母親が女の子にさせたいこと」が各年のテーマになっていた。

それがプリキュアでは「お母さんのパッと見の印象」こそが重要で、その好みをきちんと意識する必要があるという。この言葉を額面どおりに受け止めれば、つまり今の母親は「教育的価値とか何も考えず、一見しての印象で、自分が欲しいと思う女児玩具を選んでいる」ということだ。

無論、プリキュアシリーズがそんな粗雑なビジネスでないことは、私は一カスタマーとして知っている(…関連商品を買ってるわけではない。念のため)。だが、筆者は基本を踏まえていないため踏み込みが甘く、結果、記事としては疑問点を抱えたものになってしまっている。

ていうかそもそも、「女の子も暴れたい」という願望を、親が容認するようになったことこそがエポックなんじゃないの? かつてのヒット作「美少女戦士セーラームーン」に対する言及も、それとプリキュアとの単なる比較ではなく、セーラームーンが整備した土壌に触れるべきだと思うのだが…。