Schizoid Prisoner

ていうかさぁ、「No.6の偽物が現れる」という同じアイデアなのに、オリジナル版第5話「暗号 (原題"Schizoid man")」のほうがリメイク版第5話「分裂(原題"Schizoid")」よりも単純に面白くてかつ深遠てのはどうなのよ。

オリジナル版第5話は、No.6本人が「お前はNo.6と瓜二つのNo.12だ」とNo.2に言い含められ、その命令に表向き従いつつ、自分が本物のNo.6だと証明するために偽No.6と対決する、というお話。文章で書き出すとややこしいが、画面では本物のNo.6は黒ジャケット、偽物は白を着ているので一目でわかる(笑)。

終盤までは「どちらが本当のNo.6か」を掛けた戦いで本物が偽物に負け続けてしまう、という展開だ。そこにはアイデンティティクライシスの要素をもつサスペンスの面白さがあるし、結末はさらにひとひねり、「本物No.6が偽物No.6になりすまして村から脱出しようとするが、No.2はお見通しで失敗」という、本物・偽物が逆転した皮肉なものとなっている。

そもそも、毎回「番号なんかで呼ぶな!」と叫んでいる主人公が、その番号をアイデンティティとして取り戻そうと奮闘すること自体、大いなる皮肉だ。

一方、リメイク版ではどうかというと、No.6の預かり知らぬところでどうもNo.6のそっくりさんが悪事を働いているらしい、というありきたりな話。ていうか『仮面ライダードラゴンナイト』? No.2に「シックスダブル」と呼ばれるそのそっくりさんの正体は、6から分離した攻撃性だとか何とか。うわぁ、つッッッまんねえ。

一方でNo.2は、ふだんの磁界王No.2の服装を捨てて街中を徘徊。「私はNo.2だ」と名乗っても偽者扱いされてしまう。しかしこっちはこっちで、そもそも何故にそんな行動を取るのかさっぱり分からないから付いていけない。好意的に解釈すれば、オリジナル版の「No.2とはその立場と役割に対する名前であり、その名で呼ばれる人物は毎回入れ替わる」ことに対する、リメイク版なりの回答だと捉えることも可能だが、そういうふうに見たところで、つまらないものはつまらない。いやホントに、6話で終わってくれることに感謝したいほどつまらない作品だ。



(2012-01-05追加)
リメイク版の感想は以下に。
2010-06-20「リメイク版『プリズナーNo.6』」