No.6のふたつの勝利条件

さて、オリジナル版「プリズナーNo.6」である。この作品、「勝利条件」が2つあるという点が実は肝だ。「村からの脱出」については、No.6は何度試みても必ず失敗する。脱出できたらそこで終わりだから。つまりNo.6は負け続けるのだが、その一方「辞職の理由と情報」のほうは、No.6は決して話さない。話してしまってたらやはり終わりだから、こちらについてはNo.6が必ず勝つ。

必敗と必勝。勝利条件がふたつあるために、視聴者はNo.6とともに打ちひしがれることも、No.6の不屈の精神に喝采を贈ることもできる。また、勝利と敗北が並行して織り込まれるために、シリーズ全体の緊張感が維持されているのである。

個別具体例でいうと、第2話では「村からの脱出は不可能」と見せつつ、孤立無援の状況にも屈せず情報は話さないNo.6が描かれる(引き分け)。第3話は脱出にはほとんど触れず、No.2が超ハイテクを駆使しようともやはり情報は話さないNo.6の強かさが描かれる(圧勝)。第4話は逆に、情報の件は脇に追いやられ、脱出のために選挙で新しいNo.2に選ばれようとするNo.6の話だ。管理社会というテーマに深く関わるこの回、No.6は最初から最後まで負け続ける(完敗)。

「村」とは何か、No.6にとって自由とは何か。No.6の知る情報とは何だったのか、辞職の真の理由は何か。No.1とは何者か、最後にNo.6が対峙したあれがNo.1なのか。これらは、気になる人がその人なりの答を見つければいい。極論すれば、謎解きだの深読みだのはおまけに過ぎず、基本はNo.2とNo.6のゲーム的な丁々発止を楽しむ作品なのである。そこをはき違えると、リメイク版「プリズナーNo.6」のような目も当てられない駄作になってしまうのだ。