超人機メタルダー#9,#10

ファミリー劇場で視聴。
#9「夢みるモンスター! 十字砲火の恋人たち」
いわゆるモンスター三部作の第一話。この回、主人公に倒される敵役(それも両生類が人間大になったような、グロテスクな怪物)が「必ず夢を…。ウイズダァァム!!」と、愛する者の名を叫んで死ぬ、というだけでも尋常でないんですが、とにかく脚本の完成度が突出して高い。

基本は「主人公(メタルダー)は新たな刺客(ヘドグロス)の幻惑攻撃に苦戦するが、ヒロイン(舞)の助言を得て、返り討ちにする」というだけの単純明快な話で、特に難解だとか、意味深長な含意があるということはない。しかしそれに沿って、「夢」を巡るふたつのストーリーが絡むのですよ。

まずメタルダー側のストーリー。アンドロイドである彼は夢を見ず、それ故に、人が見る夢(1)というものに憧れを抱く。そんな折に襲撃してきた敵、ヘドグロスは特殊なカビを吹き付けてコンピュータを狂わせる能力の持ち主で、幻覚に惑うメタルダーは苦戦しつつ、「僕は夢を見ているのか?」(2)と思う。しかし舞に「そんなのは夢じゃない」と言われ、本当の夢を探しに古賀竜夫(メタルダーのモデルになった人物。製作者である古賀博士の息子で、太平洋戦争で戦死した海軍小尉)の故郷を訪ねる。そしてヘドグロスとの再戦。またしても幻惑されるが、記憶回路の奥底にあった古賀竜夫の記憶が…まさに夢の如く(3)蘇る。と、ここまでがクライマックスに至る流れ。

一方、「夢見るモンスター」ヘドグロス側のストーリーにも時間が割かれている。ヘドグロスの階級は軽闘士といって、ネロス帝国四軍団では最底辺の存在。大した力も無く、小ずるくておまけに金に汚いために仲間からも軽んじられ、疎まれている。そんな彼にもウイズダムという恋人がいて、出世して所帯を構えて子を育てたいという夢(4)を持っている。その夢をかなえるために一旗あげねばとメタルダーに挑むのだが、初戦は善戦しながら痛み分け。そして再戦では…と、ここからがクライマックス。

こうして整理すると何でもないようにみえるけれど、「(1)人が寝て見る夢」への興味から「(2)幻覚」を経て「(3)「前世の記憶」のフラッシュバック」という夢を得るメタルダーと、「(4)願望、希望、望み」という意味のほうの夢を終始一貫して抱き続けるヘドグロスとが、実に手際よく並行して描かれているわけですよ。メタルダーに、夢のようで夢でない幻覚を見せているのは夢見るヘドグロス、という皮肉な構図によって。

そしてクライマックス。古賀竜夫の記憶のなかに、自身の本当の夢(4)を見つけたメタルダーは、「僕は僕の夢を守り、その美しさと平和を未来につなぐ!」と、ついに幻覚を断ち切ってヘドグロスに反転攻勢。ヘドグロスもまた、「俺も俺の夢を掴む!」と非力ながら譲らない。そう、ここでとうとう、ここまで引っ張ってついに、同じレベルの夢と夢とのぶつかり合いになるのである。まさに最高潮!

しかし軽闘士ヘドグロスが正面切って戦ったところでメタルダーにかなうわけもなく、冒頭に引いたとおり「必ず夢を…。ウイズダァァム!!」と叫んで戦死(ちなみに、復活の可能性も修復の余地も無くメタルダーに倒された軍団員は、このヘドグロスが初)。

ラスト、古賀竜夫の記憶のことをメタルダーから聞いた舞が、「過去の思い出も夢には違いないわ。でもね、夢は未来のほうがいっぱいあるのよ」と返すのもいい感じの締めなんですが、さて一方、ヘドグロスにとってまさに未来の夢だったウイズダムは……。(続編を待て!)

こうして書き出すと、これをよくまぁ30分番組に納めたものだと改めて感心する。敵側にスポットを当てた話というのは「メタルダー」には珍しくはないのですが、敵役が何の脈絡も無く突然メタルダーに身の上話を始めるとか(#7)、メタルダーがほとんど出てこないとか(#11)、他の回は話作りとして評価すると少々いびつというか、尺の短さを感じてしまうものばかりなんだよな。

ただ、脚本だけが頑張り過ぎでその力に絵づくり(着ぐるみをはじめとする特撮技術のみならず、演出センスや役者の芝居等まで含めて。無論、予算の問題やスポンサーである玩具メーカーへの目配りも根本にはあるだろう)が追いついておらず、そうしたバランスの悪さもあって、ただ流して見ているとさほどのクオリティとは思えないのがもったいないです。