今年最後のエントリは「謎のリスト2009」。4月の一時期に2日1本ペースでやっつけたので(何をだ)、11、12月にドカッと刊行されて、平均するとふた月に1冊にまでなりました。
- 作者: 鎌田善和
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/02/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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連作短編集の構成で、シチュエーションにどうしても制約がある安楽椅子探偵にもかかわらず、謎解きはなかなかバラエティに富んでいて退屈しません(まぁ色々と無理がある話もあるんですが)。落語についてのウンチク要素も、マニアの嫌味を感じさせず、かつ「へぇ」と思わせてくれる程度の巧い塩梅で、そちらのほうでも読者を楽しませてくれます。
- 作者: 浅香郁夫
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 鈴木たかふみ
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分のために若くして事故死した兄の影を引きずり続けている主人公が、その傷を共有する親友たちと支えあって自分の進む道を見出し、そして赦しを得るというストーリー。ちょっと強引にオカルト要素が絡むのが「?」ですが、まずよくできてます。だけど誉めるのが難しい(苦笑)。
これがデビューとなるとかえってこの先プロとしての活動が難しそうですが、もうちょっと色々書ける作家だと思うのでがんばってほしいところ。
フロイス野村のコンペイトウ浪漫紀行 コンペイトウのルーツを求めて ポルトガル・種子島への旅
- 作者: フロイス野村
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/12/01
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なによりまず、このコンペイトウのルーツを訪ねる旅というテーマが面白い。そのため、観光地巡りではもちろんなく、といってビジネスやボランティアでもない、基本的には観光旅行ながらも、普通の日本人は行かないようなポルトガルの片田舎を訪ねるという独特の紀行文になっています。
フロイスさんの会社、大阪糖菓(株)は大阪府八尾市の本社と堺市に「コンペイトウミュージアム」を開いているそうで、関西を訪ねることがあったらついでにでも冷やかしてみたいところ。
- 作者: 佐藤彰義
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/12/01
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そこは素人小説にありがちな欠点なのですが、この作品がちょっと凄いのは「あれ? あの人はどこに行っちゃったの?」が無いこと。無闇やたらに多い登場人物、複数のストーリーラインが、終盤に向かってきちんと一つに収斂されていきます。よほどきっちりあらすじを組んでから本文にかかっているんだな、とそこは感心のしどころ(まぁ、にもかかわらずラストは全滅オチでガックリなんですが)。
普通の人にはすすめ難いのですが、異世界ファンタジーを自分で書いているような人には、良い点も悪い点もかなり参考になる作品だと思います。
- 作者: 安道理
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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児童虐待事件などのニュースでよく名前を聞く割に、実際の仕事は何をやっているのかよく分からない児童相談所の実態が、段階を追って具体的に詳細に小説仕立てで描かれる、という趣向。
完成度云々以前に、まずはとにかく面白い。各場面の描写、登場人物たちの基本的な設定と造形、その心理描写、全体構成、そして「職業もの」としてのウンチク要素と、いずれを取っても非常にハイレベルで、総じて不満のない完成度の作品といえます。文芸社には珍しく(←コラコラ)編集ががんばっていて、本文、解説的な部分、内心の声で書体を使い分けており、文字数的にはかなりのボリュームであるにもかかわらず、非常に読みやすく仕上がっています。
もちろん、主題となっている児童相談所そのものの魅力も大きく、児童虐待などの厄介な問題に果敢に取り組むホットさと、情に流されることなく正しく事態を解決に導くためのクールさとを併せ持つプロの姿は、かなりカッコイイ。この本はもうちょっと世に注目されて欲しいなぁ。