蒼天航路「呂布伝説」

面白いアクションを見せようとしていることが伝わってくる作画と、どう表現したものかと悩んだ形跡がみられる音響演出(ヨーデルとターザンを足し合わせたような呂布の叫びとか)は取り合えず及第点で、総じて悪くいうほどの出来ではなかった。
しかし、脚本及びシリーズ構成は相変わらず落第点。原作が手元に無く細部は確認出来ないが、呂布の「曹操、どこだー!!」の叫びに対して曹操は「俺の声は呂布に遠く及ばん」とか言って、部下たちに「曹操はここにいるぞ」と声を揃えさせていたはず。独りの竜である呂布に対して、臣下に支えられている曹操、という図式をここで示すから、呂布の凄さと哀しさが映えるし、最後に陳宮曹操を評して「実のところお前は何者も必要としていない」と覆すことにも意味があるというのに。
それに関連してもうひとつ、曹操の「これからは軍師の時代だ」を削ったのもひどい話で、この台詞を当の軍師たちの前で抜け抜けと言うから、陳宮の「お前は何者も必要としていない」の場面が深い意味を持つ。ていうかそもそも、「軍師の時代だ」と言わなかったら、どうして「純粋戦士(=呂布)の時代」は終わりなのか、焦点がぼやけてしまう。
細かいところも色々とアレで、「深甚に思う」を「ありがたく思う」に変えるのは仕方ないかと思うけれど、「配下の危機にそれほど心を動かされては、それは呂布殿ではございません」を「陳宮の危機にそれほど心を動かされては」に変えたら台無しだよ。危機にある自分自身をも「配下」と言うところが軍師陳宮の凄さでしょうが。
……ああ、やっぱり原作の「蒼天航路」は面白いんだな。アニメのおかげで再認識できたわ。実は単行本は引っ越しの際に思い切って処分してしまったのだけれど、買い直すことにするわ。でもアニメはもう観ない。