鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST

蒼天航路も大概だが、これもいいかげんひどいダイジェストだなと思い始めてきた。原作ほとんど読んでなくて書くのもなんだけど、「鋼の錬金術師」のエンタテイメントとしての核は、「旅先やら旅の途中でいろんな事件に首を突っ込んだり巻き込まれたりするけど、狡知と手パン錬成とで鮮やかに(または九死に一生を得て)解決!!」なんでないの? 誤解を恐れず平板な言葉で言えば「ヒーローもの」の面白さでしょ。なのに今回のアニメは、とにかく話を先へと進めることに汲々として、そうした要素がスッポリ抜け落ちている。
つか、手パン錬成の万能性を描写してこそ、等価交換の原則という制約があることや、人体錬成の禁忌の存在が映え、「賢者の石」を強く求める動機が明確になるのに、現状ではただあらすじを追っているだけ。まさにダイジェストとしか言いようがない。
今回のマルコーノートだって、本来なら「あっちへ行ってこっちへ行って、いろんな錬金術やニセの賢者の石を見てきて、ようやく本物の資料にたどりついた」けれども、材料には生きた人間が必要なんですなんだそりゃーっ!!というお話のはず。なのに、「 」内の話をやらないもんだから全然盛り上がらない。前述の「ヒーローもの」の面白さのみならず、「クエストもの」の面白さまで損なわれている。
原作がどれほどの長編だろうと、1話1話に織り込むべき要素、1クールのなかでやるべき話というのは、本来はそうは変わらないはずだし、ダイジェストならダイジェストで、それなりの構成があるんじゃないのか? それこそ、さっきあげた「 」の部分をナレーションと回想で説明しちゃうとか、はっきりと説明はしないけれど、そういう出来事があったという前提で話を構成するとかさ。
「そういう手法は拙い」という思い込みが作り手にも受け手にもあるようだけど、それも使い方次第でどうにでも活きるんじゃないかね(と、「カブトボーグVXV」を観ながら)。