通称”それ町”5巻

「歩鳥は毎日楽しいか?」
「楽しいよ」
「なんで?」
え?? なんでといわれても…」
「それを言葉にしていくのが小説なんだよ
 突飛な事 書こうとしてもだめなんだよ」
…という会話が、作品内でその作品自体を評しているようで面白い「それでも町は廻っている」(通称「それ町」)の5巻を購入した(ってモタモタしてる間にもう去年の出来事…。去年といい、正月4日のエントリは石黒正数に縁があるなあ)。

それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 5 (ヤングキングコミックス)

なんつーか、言葉にはし難い毎日の楽しさを、ちょちょいと誇張したりあるいは演出したりで面白く伝えてくれる作品なんだよなぁと。
しかもそのうえ、上で引用した会話では「突飛な事を書こうとしてもダメ」といってるくせに、宇宙人だの幽霊だの雪女だのメッシーだのがひょいひょい出てくるわ、ヒロインは一度死んでるわ(結果的には臨死体験だったが)で突飛な事もかなり多いんだよね。でも、それらさえも「ごくありふれた楽しい毎日」は呑み込んでしまう。
特に5巻は裏表紙で「今巻は日常の中に実は潜む事件の数々。その事件は実在するのだが、歩鳥の日常は相変わらずなのだ」と書いているくらいで、かなり意識的に「日常 対 突飛な事」をやろうとしている。
……そこまで強固な「日常」って、ひょっとして恐怖すべきものじゃないか…? そんな観点から「実は『それ町』はモダンホラー」論を唱えたくなったがめんどくさいのでパス。5巻の不満はアレだ、真田君の出番が少ないからラブコメ要素がほとんど無いことか。歩鳥のモリアーキーへの恋心も無いも同然になってるしなぁ。