スーパーカー展に行ってきた

2日3日はかねて予定の広島行。何を見たかといえば……。


玄関を入るといきなりこれ。フェラーリ512BBが前座ですよ?


前座その2…って、512BBのライバルにしてかのブームの最大の立役者、誰もが憧れたスーパーカーランボルギーニカウンタックしかもLP500Sまで前座ですか!?


前座その3、ていうかいきなり幕間みたいな。でもこれ、写真ででもライト格納状態を見せないと、どうスーパーカーなんだかわかんないよね。


その他前座のみなさん。
ここまで実に無料展示で、スーパーカーブームの記憶を呼び覚ましてくれる、そのイベントの名は広島市交通科学館まぼろしスーパーカー展」(8月31日まで)。
 
さて、カウンタックも512BBも前座扱いの真打ち、それは!!

マツダRX500
そして童夢 零だーっ!!
 
(2台のツーショットはこれが限界なのがちと残念)
で。なぜ8月2日に行ったのかというと、お目当てはトークショーマツダRX500開発秘話」。デザイン担当の福田成徳氏、エンジニアリングの濱谷照夫氏、さらに今回のRX500修復を手がけた栃林昭二氏が予定外の参加をされた、実に濃密な1時間でした。
特に印象に残ったのが最後の最後、観客との質疑応答での濱谷氏のお話。「テスト走行でわかってきたRX500のいいところ、悪いところはなんですか」という質問に対して、「それがわかるほど走れなかった」とのお答でした。
――本来はコスモスポーツの後継者として、「200km/hオーバーでの走行を前提とした高速実験車」として生まれたのに、なんだか「マツダ50周年記念車」という位置付けになってしまった。モーターショーに出展したら大反響となって、海外含めてあっちこっちに引っ張りまわされ、そのうち別のプロジェクトが動き出して、だからほとんどテストというテストができなかった――
というお話。なまじインパクトのあるデザインとコンセプト、そして完成度だったがために神輿と担がれてしまい、実験車としての本来の目的を果たせぬうちに長い眠りに付いた……。こうした点でもRX-500は悲運の名車といえるでしょう。
しかも、その「別のプロジェクト」から生まれたのがサバンナRX-7という大成功作なのが、また切ないお話。
その他、関心をもったポイントを箇条書きにしてみる。
・とにかく200km/hオーバーは未知の世界だったが、制動性能は充分でなければならないという考えから、4ポットキャリパー・ベンチレーテッドディスクブレーキを採用した。でも周りを見ると2ポットばかりで、ちょっとやり過ぎだったかな、と濱谷氏は苦笑。
・とにかく200km/hオーバーは未知の世界だったが、制動性能は充分でなければならないという考えから、一時はエアブレーキの装備も構想されていた。「何を考えとるか」と主査に怒られた、と福田氏苦笑。
・砲弾型(コーダトロンカフォルム)なのは主に空力的な理由。ただ、市販を意識すると、このサイズではライトウェイトスポーツとは言い難いし、メインの市場はアメリカだからグランツーリスモ(GT)に仕立てる必要があった。そのため、エンジンルームの上にラケッジスペースを設ける構想もあった。でも、ミドシップレイアウトというのは色々とシビアだから、そんなことはできませんでしたと福田氏。
・実験車なので室内へのベンチレーションは考えてなかった。フェンダーミラーのインテークから室内に空気を取り入れている独特の構造になっているが、どうも話し振りからすると、吸気口はそれだけだったらしい……。ウインドも開かないんだよなこの車。ええと、これも福田氏のほうの話だったかな。
・なんだかんだいっても、市販されたときに売れるデザインでないと駄目。リアセクションのデザインは、実際に製作された「グランツーリスモ」以外に、後のRX-7風のグラスハッチを備えた「クーペ」、大きなリアウイングを付けた「レーシングマシン」の3種類があり、最も空気抵抗が小さいGT型が選ばれたものの、市販するとしたらクーペになったのではないか、と福田氏。
・会場に用意された10分の1くらいのRX-500の模型はパルサーEXAよろしく、リアセクションが「GT」「クーペ」「レーシング」と換装可能なもの。福田氏はそれを使って、「はい、じゃあこのデザインが一番良いと思う人手を上げてください」「じゃあこっちのデザインのほうが良い人」と、即興でマーケティングリサーチ。一番人気はやはりクーペだった?
・ホイールは鉄チンが基本、アルミはあくまで展示用。本来はあれで走られちゃ困るものだった。
 
トークショー全体から受けたRX500の印象は「いびつな車」。単なるデザインスタディやお祭り用のコンセプトカーではなく、本気の「高速走行実験車」。それ故、数々の先進的要素が盛り込まれているが、そのほとんどは現実に可能なレベルのもので、その意味では地に足の付いた車だった。しかし一方、市販された場合まで視野に入れて考えたら、色々と根本的に足りない部分がある――。きわめて流麗なフォルムの内面に、そうしたいびつさ、アンバランスさを内包していることがRX500の魅力ではないかと、改めて思い至った次第です。