「リアル鬼ごっこ」の真の凄さ

さて、もう少し冷静に状況をみてみましょうか。出版市場の状況を、web2.0(死語?)とともに喧伝された言葉を借りて言うなら、共同出版ロングテールの端っこをさらに無理矢理伸ばすようなものです。供給に際して著者が背負う金銭的負担が過大なのは確かですし、無理に伸ばしたしっぽの端だから(さすがのweb2.0状況といえど)ペイするほどの需要は期待できません。
しかし、無理矢理であれ供給の多様化(単なる「拡大」ではありません)は、その供給と比べればはるかに小さくとも、需要の新たな掘り起こしにつながるのではないでしょうか? 
リアル鬼ごっこ』の真の凄さは「マトモな編集者のマトモな評価基準では箸にも棒にもかからない作品なのに、出版してみたら実は需要があった」ことにある、と皮肉ではなく本気で思っています。市場全体を俯瞰した場合、そうした部分に共同出版の価値を認めたいのです。少なくとも「デビューは共同出版だったがベストセラーになった、しかしそれはレアケースである」だけで済ませていい話ではないでしょう(まぁ、編集者という職能、専門性が否定されるというのは、あまり愉快な話ではないのですが……この話はケータイ小説の隆盛と絡めていずれ改めて)。