「仮面ライダー電王」の釈然としない点

1年間楽しませてくれた「仮面ライダー電王」ですが、最初から最後までどうしても釈然としなかったことがひとつ。謎解きとか伏線とかでなく(以前指摘した謎がまさか全て未解決で終わるとは思ってませんでしたが・苦笑)、物語の根幹である敵イマジンの扱いについてです。
まずイマジンの大目的は「『イマジンの未来』の消滅を防ぐこと」で、彼らにしてみれば文字どおりの「世界を救う行為」なんですよね。ハナのいた時間を消滅させたり2007年やその過去をいじくりまわしたりもしましたが、そうでもしなければ全イマジンもろとも世界が消滅してしまう。そうした悲壮感、「他に選択の余地がないから、自分たちの生存をかけて時の運行に干渉している」ことがほとんど置き去りだったのが残念です。
対する電王サイドはただ漠然と「時の運行を守るため」だったり、近視眼的な「人助け」だったり、「時の運行を守るってのは人助けじゃねーんだ」と言いつつ実は自分の婚約者と子供を守るためだったりと、スケールが小さくみえるのも気になりました。途中で「過去が変わっても人々は不幸になるわけではない」という話をやってしまったから、より一層「何のために戦ってるのよ電王?」という気がします。
閑話休題、イマジンの大目的にそれなりの事情があるとしても、実際やることが問題なら退治すべき悪者だと理解できるのですが、そこでまた引っかかってしまう。小目的は「願いを訊いて契約する」「契約を果たして過去に飛ぶ」「過去の世界で桜井を殺す」で、本来なら何も人様に迷惑をかけることではないのよね。現にキンとかデネブとかジークとか「人間と契約したけどイイ奴」なイマジンもいるわけで、十把一絡げで倒された、最後にまとめて消滅したイマジンの中にも無害な者もいたんだろうなーと思うと可哀相になります。
本来の目的には問題が無い、でも敵役でなければならないものだから、話づくりとして「【強引に】願いを訊いて契約する」「【でたらめな方法で】契約を果たして過去に飛ぶ」「過去の世界で桜井を殺す【ために無差別破壊を行う】」といったふうに、目先の手段によって無理矢理悪者に仕立てられていた感がありました。初めのうちは「歴史改変のために過去へ行き、無差別破壊を行っている」ように見せていたから、倒すべき敵だと思えましたが、途中で桜井が目的ってことになってしまったし…。
こうした釈然としない部分があるからといって『電王』は駄作だ失敗作だというつもりは毛頭ありません。むしろ、これらの掘り下げを投げ出したからこそ巧くまとまったとさえ思うのですが(敵の事情に中途半端に踏み込んでは話をまとめられずに終わるのが平成ライダーの常だし)、何にしても「隙の無い作品」を作るのは難しい、とつくづく思います。まー、「イマジンの設定が単純明快な悪者だったならなぁ」という気もしなくもないですが、それではやっぱりこれほど面白い作品にはならなかったよね…。