- 作者: 中島誠之助
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/11/13
- メディア: 新書
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中島誠之助の自伝。自伝的なエッセイ集は既刊にもあるので「前に読んだような?」な部分も少なからずあけれど、いかにして中島誠之助という人物が形成されたかを読むのは相当に面白い。特に、骨董品店を営んでいた養父と過ごした少年時代の、こんなエピソードはガンッときました。養父の骨董店が空襲で焼かれてしまった後の話。
空襲の翌日、まだあたり一面がくすぶり、熱くて歩けないようなときに、おやじはスコップで乾山の焼けただれた手鉢を掘り起こしたそうです。掘り起こしたときにはまだ熱くて持っていられないぐらい、真っ黒に焼けただれていた
それを、後生大事に持ってかえっていきました。
と、これだけなら骨董店主の執念といったところですが、戦後この手鉢を食器として使うところからがひと味違う。
三角に切られたキュウリの浅漬けが、焼けただれた乾山の手鉢に盛られる。乾山とキュウリを毎日眺めながら、私は美しいとか美しくないの問題ではなく、ものを愛惜すること、慈しむことを学びました。
自分が大事にしていた器が空襲で焼けてしまったが、焼けただれた姿になっても割れずに残ってくれた。他の人は捨てればいいと言うだろうが、そこに新鮮なキュウリを盛る。250年もの時の流れを経た焼けただれた器と、今もぎたてのキュウリのみずみずしさ……。
そのころはまったく思いもしませんでしたが、焼けただれた乾山の手鉢と緑美しいキュウリの切り口が、美意識の第一歩を踏み出させてくれた。
いやー、ついつい「へうげもの」を連想してしまう。フィクションと現実の転倒はどうかと思うけど連想するんだから仕方ない。
- 作者: 山田芳裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12/22
- メディア: コミック
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