核兵器とウルトラマンタロウ

14日にCS局ファミリー劇場で『ウルトラマンタロウ』「これがウルトラの国だ!」の回を試聴。サブタイトルに騙された。いや、サブタイトルどおりの話なんだけれど、怪獣の基本設定が凄すぎる。
某国が超兵器の実験場に使っている星の名がムルロア星。そこから地球に飛来する怪獣の名もまたムルロア、しかも地球に来る途中でフランスの宇宙船を撃破してくる、というのが導入部。フランス領ムルロア環礁で核実験が繰り返されていた、という時事をストレートかつ批判的に取り入れていたんですねえ。「それは血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ」てなカッコイイ台詞はありませんが、『ウルトラセブン』「超兵器R-1号」並です。
で、そのムルロア、お約束で東京のほうに来ちゃうわけですが、そこで何をするかというと黒煙を吐く。爆心地たるムルロアから湧き出した黒い煙は空に広がり、東京を闇に包み、日本を闇に包み、ついには地球全てを闇に覆い尽くしてしまった
……って、これってまさか「核の冬」!?
調べてみると、「核の冬」が提唱されたのは「ウルトラマンタロウ」よりずっとずっと後の1983年なので(「北斗の拳」や「ザ・デイ・アフター」にさえ核の冬の描写は無かったしね)、これは単なる偶然。ムルロアの黒煙にはアトミック・フォッグという物騒な別名もあるので(劇中ではこの名は登場せず)、「黒い雨」のイメージだったのかもしれません。
ところで、その黒い霧を晴らすためにタロウはひとたびウルトラの国へ行き、ウルトラベルを持って地球へ帰ってくるわけですが(ここから先は次回のお話)……これって何となく、放射能除去装置・コスモクリーナーDみたいな……? しかし『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)も『ウルトラマンタロウ』(1973年)の後なので、これも偶然。
まぁなんだ。

どちらもともに、「太郎」「大和」という日本的な名を背負った者が、核兵器に汚された世界を清浄にする機器を、遠く宇宙の彼方にある善意の星へ借り受けに行く話なのである。
核兵器放射能汚染に対して鋭敏な問題意識を持ちながら、しかし、日本人は自前では何ともできないのだ! そして助けてくれる者は、地球の上にはいない。
1973年・1974年という同時代に、かくも似通った図式の物語が生まれたことに、偶然を超えた意味を感じざるを得ない。「ヤマト」が「タロウ」から影響を受けたとは思えないからこそ、なおさらである。

とかなんとか言うと、もっともらしいけどね。
 
……こういう書き方するから「どこにトラップがあるか分からない」とか言われちゃうんだろうな(苦笑)。