レールよ高らかにうたえ

先日、大マジでどシリアスに国鉄分割民営化を話題にしながら、途中でパロディに滑らせて「ふみ切り戦士シャダーン」で落としてしまったので、その後始末ということで、当時の模様を取り上げた本を探してみた。

レールよ高らかにうたえ

レールよ高らかにうたえ

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……探せばあるものだ。文芸社の、おそらくは協力出版の本なのでセブンアンドワイで取り寄せるしかないかと思ったが、刊行が2007年4月とまだ日が浅いためか新宿の紀伊国屋書店でふつうに買えた。仕事とは無関係に(たぶん)協力出版の本を買い求めたのは『ろくろ首考』以来だな。

鉄路に生きる男たちのロマン!
国鉄分割民営化の嵐のなか、全国の働く仲間たちに高らかに歌いかける。
国鉄うたごえ運動のリーダーとして、組合活動に長年貢献した著者の国鉄解体への抵抗の書である。

「レールよ高らかにうたえ」とのタイトル、上に引用した腰巻の内容紹介から牧歌的なものを想像していたら、さにあらず。極めてハードな話だった。
……いや、活動そのものは割と穏やかだからこそ、職場環境の非人道的なまでのハードさと、被弾圧の苛烈が際立っている、というべきか。刊行は2007年だが、元々は1988年に刊行された作品。話の中心は、戦後の労働組合と文化活動、なかでも「国鉄うたごえ運動」との関わりについてだ。しかし、読んでいて引き込まれるのは、それよりもまず職場環境の話。糞便まみれだったり(当時の列車内の便所は垂れ流しだったため)、時には文字どおり命がけだった保線作業に、それでも国鉄マンの誇りにかけて取り組む様には、ただただ圧倒される。
そしてもうひとつ、今の私の関心事に密接にリンクしているのが、国鉄分割民営化前夜の弾圧の非道さ。1988年に書かれたものだけに、それはもう同時代の記憶として生々しく鮮明に描かれている。その非道っぷりときたら、「この本は弾圧を受ける側から見ている」という点を割り引いてもなお、人として許されざるレベルに達しているといえましょう。
当時のマスコミによる世論誘導がどのようなものだったか、そして、あらゆるベクトルを可能な限り排除して評価した場合、国労とはどのような組織だったといえるのか? 他の図書や資料も併せて読むべきではないか、という気がしてきた。