超能力番組を10倍楽しむ本

超能力番組を10倍楽しむ本

超能力番組を10倍楽しむ本

超能力のトリックを明かし、その手のTV番組の悪質な事実捏造を暴いていく、という趣旨の本。子供まで対象読者と想定しているため、ソフトな会話体で読みやすく書かれている一方、かなり直球で真面目。「と学会」名義の本のような「ウォッチャーだからウォッチングの対象に絶滅されても困るんですよ」という傍観者の態度はありません。ただ、それでも息苦しさは感じませんし、「あるある」騒動以降での出版というタイミングからすれば、時宜に適した方向性といえるでしょう(出版企画自体は昨年からだろうから、山本弘か担当編集者は結構な先見の明である)。
この本が偉いのは、追試を兼ねて「実際にやってみせている」こと。「雲を消す」「透視によって相手のいる場所を言い当てる」あたりは、読んでいて「あ〜、私も次の休みにでもやってみようかな?」なんて気にさえなりました(というか、そういう気分へと読者を誘導する構成になっている)。単に「主人公が」やってみせているだけでなく、「作者が」ちゃんとやっており、『FBI超能力捜査官』の検証などに至っては、三島市まで出かけて現地を検証したりしています。
一応、「アンチ」(否定派)ではなく「スケプティクス」(懐疑派)としての態度をとろう、とは主張しているのですが、落ち着くところはやはり厳しい批判。ただしそれは、相手があまりにお粗末だから致し方ないでしょう。
私には、超能力のトリックはさして目新しいものではなかったのですが、『TVのチカラ』『FBI超能力捜査官』などTV番組の捏造の酷さにはビックリ(それ以前に、今のTV番組で超能力ものが定番となっていることすら知らなかった……私が観るTV番組って、ニュース5割、アニメ・特撮4割、その他1割なんで)。それも、充分な観察力さえあればどんな視聴者でも気付く程度の、完成度の低いずさんな捏造なのが視聴者をナメてるというか逆に面白いというか。
ちょっと気になったのは、ラノベ的というか『マンガでわかる○○』系というか、イマ風のオタク好みのする絵柄の挿絵が、表紙と裏表紙の2点きり(本編では使いまわし)という点でしょうか(笑)。
なお、参考文献紹介で入手困難とされていたゆうむはじめの『どこが超能力やねん』は、今年2月に『トリックの教科書―イカサマ超常現象を暴く』と改題されてデータハウスから復刊されています。私は未読。