片運転台の車運車

7、8年ほど抱えていた疑問について、思いがけず答を得た。
かつて世田谷区役所祖師谷出張所においてあった、古い絵本。「はたらくくるま」を取り上げたものだ。内容から(というか描かれた車の車種から)1980年頃の発行とみられるその絵本に、片運転台(ワンサイドキャブ)の自動車運搬車(カーキャリア)が描かれていた。「えっ? こんな車があったの?」という疑問がまずひとつ。そしてもうひとつ、乗用車(79年デビューのニューレオーネ)を満載したその姿が、どこかで傾いているような、まっすぐのはずなのに歪んでいるような、まるで騙し絵のようで、「一体どういう構造なんだ?」という疑問を抱いたのだった。写真ではなくイラストだったために、「実在した車なのか?」とさえ思ったものだ。
その車が、先日たまたま目にした運送会社の五十年史に載っていたのである。本文中にはこうある。

 四輪車を積載する車両については、当初、ホンダから軽トラックが初めて発売された昭和38年(1963)頃には二輪車積載用の車両を流用したこともあったが、乗用車の販売拡大に伴って間もなく二段積トレーラーを導入するなど、四輪積載に適した車両開発に乗り出した。
 その後、ホンダが軽自動車を突破口に乗用車市場に本格参入してからは、ホイルペースの延長、車幅の拡幅など、車両改造のピッチを早めた。43年にはワンサイドタイプの車両を開発したが、これは運転台が縦に細長く、その横に積載ができる生コン車にヒントを得たものである。運転席の後部にはベッドがついており、乗務員の間では「棺桶」とも呼ばれた。
(『日本梱包運輸倉庫 五十年史』P135〜136)

画像はこの日本梱包運輸倉庫のホームページにもある。(上から3番目。この画像は表示の段階で小さくしているだけで、データ自体は意外に大きい)
日野BG100(改)と、形式も解かったのでさらにウェブ検索をかける……。あった。「特種車の部屋」というサイトのフォトギャラリー7だ。
これらの写真ではキャブ横の積載スペースは狭そうに見えるが、小型車も積載可能。上掲書にはホンダ1300クーペを載せた状態の写真が掲載されている。上段や後ろにも同じ車が積まれているのを見ると、どこかで歪んでいるような、ごまかされているような……やはり騙し絵を見る気分になる。ただ単に、下段一番前の積載スペースは左側にオフセットされているだけだとわかってはいるのだが……。