可思莫思に君と

調和は神の付けたる名にして 我らが可思莫思は 名も無き秋桜

【『読売新聞』編集手帳 06/10/14】
コスモスはこの季節を淡いパステル色で飾る。子供たちに色とりどりのパステルで描いてもらいたくて地上に生まれてきたような、面立ちの優しい秋の花である
◆中国語ではコスモスの音に「可思莫思」の字をあてることもあるという。「可」(べし)と「莫」(なかれ)を助動詞として眺めてみれば、「思うべし、思うなかれ」と読み下すこともできる
◆あきらめたい、あきらめきれない恋心か、見果てぬ夢か、言葉の誘う連想はさまざまだろう。

そう、さまざまだ。私などは、貪欲な生命力をもつ帰化植物・コスモスが旧来の「日本の秋の風景」を変えてしまったことや、そのコスモスに生存圏を脅かされる在来種のことなどを思いつつ、しかしコスモス畑を前にすると「まぁ綺麗だからいいやね」「私にゃどうにもできんわな」と、思うことをやめる。そんな様を連想する。
そして、思うべきことを思わぬまま思うことをやめる者の、多きことを思う。