- 作者: アントワーヌド・サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,山崎庸一郎
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2001/08
- メディア: 単行本
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舞台は第2次世界大戦、ドイツの侵攻の前にズタボロの負け戦を演じているフランス。工業国ドイツと農業国フランスとでは元よりまともな戦いになるはずもなく、軍の指揮系統は寸断され、道には難民があふれ、戦争はただ戦争の体裁を保ちたいがために続ける「戦争ごっこ」と化していた。仏軍のパイロットである主人公(作者自身)は、既に意味を失っている偵察飛行に飛び立つが、高空の酸素不足でクラクラになるわ、整備不良のフットペダルは凍結するわ、スロットルまで凍結するわ、対空砲火にさらされるわの散々な目に。それでもなんとか生きて帰還する……という、松本零士か新谷かおるのマンガみたいな話だった。いやホントに。小林源文や滝沢秀峰でないのがポイントな。
クライマックスでいきなりストーリーを投げ出して、なんだか小難しい哲学話がゴテッとした塊になって出てきて「僕はここにいてもいいんだ!」みたいな結論にいたるあたりは「エヴァンゲリオン」のようでもある。
……真面目な感想は機会があったらね。フランスの負け戦のズタボロっぷりは、案外と日本人のシンパシーを呼ぶものがあるなぁと思ったけれど、地続きで負け戦が押し寄せてくる感じは日本にはない……とか、個人の経験を立脚点にしながらもそれを冷静に客観視する姿勢を保っているために、また、現実と回想との間での意識の行き来が次第に振幅を増すために(それとも振幅が小さくなるために、か?)、クライマックスでの対空砲火が反転して「啓示」になるのだなぁ……とかネタは色々ある。