ろくろ首の首

ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待 (新潮新書)

ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待 (新潮新書)

読了。各妖怪の特徴を切り口にして、生物学・生態学の着眼点や考え方をワンテーマずつ伝える、といった趣向の本。例えば飛頭蛮(ヒトウバン)ならば、顔面の筋肉の付き方がテーマとなり、「耳で羽ばたいて飛ぶ妖怪には、どんな筋肉が着いていると考えられるか?」という話が中心になる。
「頭だけの妖怪って、内臓はどういう構造になってるのよ?」とか、「そもそもなんでこんな形態になったのよ?」とかは全く考えておらず、その点はややもの足りないが、潔いともいえる。一体の妖怪全体に重点を置いた考察は前著『ろくろ首考』(ISBN:4835546350)でやっているし、新潮新書というレーベルのことも考えれば、こうした切り口は正しい判断といえるだろう。
ふつうに解釈すれば、「妖怪」ではなく「怪現象」に分類されるであろう目目連(障子に無数の目が浮かび上がるという妖怪、というか怪異)をあえて生物として扱って、眼球の構造と発生の過程を解説しつつ、「いかにして目目連は生まれるか」を生物学的に解釈する無茶さ加減あたりが素敵です。
まあ、なかにはちょっとハズシ気味なものがあるのも事実で、カオナシという面白い素材を取り上げながら、「飲み込んだ生き物の声をそっくり真似できる」という特性の解釈しかしないあたりは、やはりもの足りなく感じられた。免疫の話に結びつけるあたりは面白いんだけどね。