差別語かもしれない音痴#2

(承前)『日本国語大辞典』の「音痴」の項には、金田一京助の研究による語源説が書かれている。

大正の初め、一高の寮の風呂場で生まれた語。風呂場で蛮声をはり上げる調子はずれの胴間声をききかねて、頭はよいが、音楽的には白痴なのだという意味でオンチ(音痴)といったもの[国語研究=金田一京助]

んん? これっていわゆる普通の音痴では? 彼らの音痴に「生理的な機能不全や心因性の原因」があるとは思えない。ううむ……「痴」が「白痴」に由来する以上、そこには「生理的な機能不全や心因性の原因」があるのだ、ということか? しかしここに登場する「白痴」とは「精神遅滞の最も重度のもの」ではなくて、なんというかマァ、単なる侮蔑の言い回しだろう。この「音痴」を「音聾」と同義と扱うことには無理を感じてしまう。
語源説自体が誤りなのか? それとも後になって「音聾」と同義になったのか? それとも……語源は合っているのに、ありもしない第一義をムリヤリこじつけたのか? だとしたら何故?
語源説を知ったらかえってわけがわからなくなった、という珍しい経験となった。出典である金田一京助の研究の全文にあたればもうちょっとはっきりするんだろうけど、そこまで手をかける気には……。ていうかその前に、そもそもの疑問である「まず音痴ありき」なのは何故? のほうに決着つけないと。