「アイシールド21公式データブック」

いや、もっと普通に資料集ていうか、キャラクターファイルていうか、名場面集ていうかダイジェストっていうかさあ……。既刊の単行本の内容からまとめなおしてくれれば充分だから……などといいたくなる、変な方向に力の入り過ぎた一冊。
現実の選手名鑑になぞらえた構成で、劇中に登場する秋季東京大会参加チーム全36のデータが掲載されているのだけれど、本編には名前しか出てこなかった、そして二度と登場しないであろうチームの構成、特徴を列挙されてもどうしたものやら、である。その半面、マンガのなかではどんなに活躍していても、選手でないキャラクターはないがしろにされている(鈴音とかデビルバットとか小バットとかケルベロスとかブタとか鈴音とか車椅子の少年とか(名前失念)すぐに気絶する桜庭ファンの女の子とか)。
また、キャラクター解説は基本的に「作品世界のなかで雑誌記者が書いた解説」なので、読者には知られているが登場人物の大多数には知られていない事実(アイシールド21の正体やキッドの本名など)がふせられているのも、賛否分かれるところだろう。いちいち解説されなくともわかっている熱心なファンであれば「芸が細かいな」と感心するだろうが、私のような「毎週読んでいるが単行本は買ってない」読者には、キッドの本名が思い出せないときにちょいと開いて参照できるような本のほうが有り難いのだ。
あとがきに「ファンによるファンの為のファンブック」とあるが、実際、良質のファンジン(同人誌)のような本だ。例えば「機動武闘伝Gガンダム」を題材にして、ネオジャパン国内予選に参加した全MFの設定をでっち上げて……ネオホッカイドウ代表サーモンガンダム、ネオアオモリ代表i−ガンダム、ネオイワテ代表リアスガンダム、ネオアキタ代表ナマハゲガンダム、ネオミヤギ代表マサムネガンダム、ネオヤマガタ代表ガンダムショーギウォーズ、ネオフクシマ代表バンダイガンダム、ネオグンマ代表クニサダガンダム、ネオトチギ代表ガンダムヨウメイモン、ネオイバラキ代表ガンダムダイオージャ、ネオサイタマ代表レッズガンダム、ネオチバ代表ギブスンガンダム、ネオカナガワ代表ミナトガンダム…ってきりがないのでこれくらいに…網羅した本、みたいなもの。同人誌であれば喝采したいところだが、商業出版でそういう凝り方をされても当惑してしまう。
ただ、描き手の熱意は充分すぎるほどに伝わってくるので、そういう熱さや真摯さを評価の対象とする人はぜひ手にとって欲しい。