ゾイドジェネシス#15「離散」

義憤にかられるルージは仲間に黙ってゼルフトに戻ったものの、何もできず己の無力を思い知る。そしてその間、他の仲間達はディガルドの大軍勢の襲撃を受けて敗走、一行は離散してまった……というお話。
このところ何かとダレ気味で、正直行く先不安でしたが、今回かなり持ち直しました。こういう回があるから見逃せない。ストーリーそのものはさらに救いが無い展開でしたが、細かな人物造形の積み重ねによって、ルージのはた迷惑な行動も嫌味無く説得力あるものに。一行が行動を共にする理由が実は薄弱であることが「確認」されるなど、シリーズ上のターニングポイント(またかよ)としても十分に神経の行き届いた回でした。つーか毎回このくらいの完成度ならなあ……。

ゾイド
久々に見応えのある戦闘シーンが展開。これも、全戦力をラ・カン追撃に投入したゲオルグの思い切りの良さのたまものでしょう。まぁ、ここまでやってラ・カンたちには(多分)逃げられて、指揮官として有能なのか無能なのか判断に迷うところですが。ソウルタイガーもそれなりのアクションを披露、バンブリアンは相変わらず動いてませんが(苦笑)リーオ多弾頭弾使用という大きな見せ場がありました。ただバイオラプターの白刃取りはちょっとやり過ぎかも。また、ガラガの回想と最後の場面、久々に登場したバラッツを見て、こいつらこそ「ジェネシス」に欠かせないバイプレイヤーだと改めて思いました。

ルージ
ただ2、3日生活を共にしただけのゼルフトの町を救うために危険を冒すことも、その目に見えたものだけがディガルドの脅威だと思うことも、そして自分たちの力だけでゼルフトの町をなんとかできると思うことも、正しいヒーローの姿でした……しかしこの世界では、その力は及ばない(泣)。町を出てのガラガとの会話、「俺、ちっぽけだ」「これからデカくなりゃいいさ」、そしてルネの「ルーイがディガルドの連中を町から追い払う夢」は、果たして現実のものとなるのでしょうか。

ラ・カン&ミィ
序盤、食ってかかるルージに対する「ひとひとりの力には限界がある…」という台詞は、悔恨の念の現われなのでしょうが、今回の結末を知ってから見返すと、ほとんど予言ですな。単にラ・カン自身の台詞によってのみ彼の苦悩を描くのではなく、そこでミィがルージに食って掛かるのも巧かった。ミィが涙をポロポロ流しながらの「あんたなんかに何がわかるっていうのよ! バカァーッ!!」からラ・カンの平手打ちまでの流れが、普段のミィのキャラクターとのギャップと相まって、ラ・カンの苦悩の深さを掘り下げてくれました。最後の「逃げることも、また勇気だ!」という台詞も、この回全体を貫くテーマにかかっており、いや今回はホントに重層的・多面的な台詞使いが巧かったなぁ。

ガラガ
つーか今回、責めを負うべきはルージじゃなくてガラガだよな(苦笑)。過去が明かされることが、そのままルージに協力する動機になっているというキャラ描写が巧かった。ところで背中のリーオの武器は、バイオゾイドの襲撃とは無関係に装備していたんですかね? それとも後に入手したものなのか? 回想では使っていませんでしたが…。

ロン
「どうして何の関係も無い町のために…」と、ルージにゼルフト帰還を思いとどまらせることと併せて、旅の目的(ジェネレーター職人探し)を再確認し、一行が行動を共にする理由が全てそこに収斂されることを明らかにする役回りが見事でした。ロンという、これまでパッとしなかったキャラクターを巧く使ってきましたな。