[雑感] 懐かしさの混乱#2

(承前)どうも「昔」の度合いがある程度を超えると、どんなモノも出来事も、時系列とは無関係に同程度の「昔」と感じてしまうようだ。さすがにゲームボーイスーパーカー消しゴムの併記には違和感があるけれど「懐かしさの混乱」の例は枚挙に暇が無い。かの傑作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ! モーレツ オトナ帝国の逆襲』に登場する自動車をみても、60年代半ばには既に少数派だったオート三輪と、67年デビューのトヨタ2000GTが同列に「懐かしい車」だったりする。昨年にも、今川泰宏版『鉄人28号』の「戦後のイメージ」をごった煮にした「昭和30年」があった(単に考証が至らないだけなのか判断に迷う部分もあるけれど)。現実世界に目を移せば、東京都青梅市の「昭和レトロ商品博物館」の建物は、その実、大正末期に建てられた商店である。

図説 昭和レトロ商品博物館 (ふくろうの本)

図説 昭和レトロ商品博物館 (ふくろうの本)

もちろん、『70年代にはまだ見かけた』オート3輪、『昭和の時代まで第一線の商店だった』大正時代の建築、ではありますが……。

私のかつての愛車、日産パオ。既に廃車となっているので隠す必要の無いナンバーは「2380(にっ・さん・ぱ・お)」。登場当時は「似非レトロ」と散々馬鹿にされたものだが(私も馬鹿にしました)、15年を経て本当にレトロカーとなった。ただ、この車を見て喚起される「懐かしさ」は、「こういうバカな企画にもお金が存分にかけられたバブル期が懐かしいなあ」ではなく、やはり漠然と「どこか昔が懐かしい(=人から教えられたイメージの懐かしさ)」ではないだろうか。懐かしさとは、一体どこからくるのだろう?