なぜ誰も「変なホテル」はメタボリズムだと言わないのか

HTBに「変なホテル」?
長崎新聞 1月28日(水)9時21分配信

長崎県佐世保市ハウステンボスHTB)は27日、園内に建設中のスマートホテル(省エネホテル)の概要を発表。名称を「変なホテル〜変わり続けることを約束するホテル〜」とし、第1期分(72室)を7月17日に開業、2月1日から予約受け付けを開始する。

太陽光発電など再生可能エネルギーや、接客用のロボットなどを導入した次世代型のホテル。光熱費は従来のホテルの半分、人件費も3分の1程度に抑えるという。初年度の利用客5万4千人、売上高3億5千万円を目指す。第2期(72室)は来年開業予定。

第1期のホテルは総工費10億円。鉄骨造り2階建てで、客室は広さに合わせて3タイプ。冷暖房は、冷温水が循環する鋼製パイプを組み合わせた「輻射(ふくしゃ)パネル」を導入。顔認証システムや、受け付け、掃除、運搬用のロボットを導入することで人件費削減を図る。

(略)

共同開発した東京大生産技術研究所と鹿島(東京)などと記者会見した澤田秀雄社長は「常に進化させ、快適で競争力があるホテルとして世界中に広めていきたい」と話した。

他の記事では「常に先進技術を取り入れ、変わり続けるホテル」「先進技術を駆使するならば、もはや変わり続けることは自然のこと」……。なんだ、半世紀ぶりのメタボリズムじゃないか。

http://www.huistenbosch.co.jp/aboutus/pdf/150127_htb33.pdf
実際にどう「変わり続ける」のか、変化を前提とした構造がどこなのか、肝心の部分が判然としないから眉につば付ける必要はあるが、とはいえ「建設コストの削減」を明確に打ち出しているから実際変わりやすいのだろう。築後わずか20年でカプセル丸ごと廃棄する(しなければならない)中銀カプセルタワーよりもよほど代謝が意識されている。また、環境負荷への配慮もあることも(「省エネルギー」こそ謳うものの、それを「エコロジー」だの「地球にやさしい」などとはいわず「光熱費削減」とする正直さに好感が持てる)、故・黒川紀章の「メタボリズムエコロジーの思想」という世迷言への当て付けのようだ。

私は建築に関してはミーハーなので(何事につけミーハーだがとりわけ建築に関しては)体系だった知識が無く、専門家たちで本流となっている評価の基準も知らないのだが、そっちの人はどう見ているんだろうこれ? これがメタボリズムだなんて思ってもいないのではないか。であるなら、それは何故?
 

中銀カプセルタワーは、おそらく保存に値する建物である。しかしそれは、やはり過去の記念碑としての価値だ。現代にあってなおメタボリズムなる思想を貫くのであれば、現在のビルが丸ごと取り壊されるという「土地の代謝」を容認するか、カプセルを新製するならばより代謝を活発にするとか(ex.耐用年数はきっちり20年だが交換は極めて低廉ででき、廃棄時の環境負荷もゼロに等しい)、この二つしか道はないように思う。
 
http://gray.ap.teacup.com/unknown/150.html


穴埋めで、埼玉県立北浦和公園に展示されている「中銀カプセルタワー」のカプセルの画像でも貼っておこう。2012年7月10日撮影。

タワーを成すはずのカプセルが、ただ1個だけで公園の緑の中にごろんと置かれているシュールさ。黒田紀章が言うメタボリズムの空疎な本質を感じてしまう。