Hなクルマの話

先日、市ヶ谷の某所にFCXクラリティが停まっておりまして。ドライバーが乗ったままで(オーナードライバーなら話しかければあれこれ語ってくれるであろう珍車ですが、当然というか緑ナンバー)あまりよく観察できなかったのですが、あれで中々カッコイイですな。言ってしまえば2代目インサイトの拡大版というか4代目オデッセイのセダン版というか、そういうデザインなんですが、未来的なムードと大型セダンらしい高級感とが両立しておりました。あ、もちろん元来はショーファードリヴン志向でなく、主にメカニックのコストの問題で自家用車としては売りようがないほど高額だからそうせざるを得ない、という事情も了解しておりますよ。

そんなわけでHなクルマの話を少々。Hとは言うまでもなく水素のことです。先日トヨタがFCV(って商品名もまさかこのまんまなの?)の量産モデルを発表して、燃料電池車の話題が盛り上がってまいりました。
そこに水をかけるのが産経新聞の記事。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140702-00000556-san-bus_all

究極のエコカー燃料電池車」に落とし穴、普及に暗雲…
産経新聞 7月3日(木)8時0分配信

(略)
もうひとつ、燃料電池車の普及に欠かせないのは、燃料をFCVに補給する水素ステーションの拡充だ。

自動車メーカーやガス会社で作る任意団体「燃料電池実用化推進協議会」は平成22年、FCVの普及に向けた「シナリオ」をつくった。水素ステーションの国内整備を先行させた上で、車体価格を引き下げるためFCVの大量生産に乗りだす。そして37年にFCVが200万台、水素ステーションは全国1千カ所とする青写真を描いた。これを受け、自動車メーカーやガス会社など11社が27年に水素ステーションを全国100カ所に展開する共同声明を出した。

ところが、6月時点で設置された水素ステーションは全国19カ所にすぎない。(略)ネックは、割高な建設費や各種の規制だ。

日本政策投資銀行の試算によると、ステーションに必要となる水素の圧縮機は欧州では8千万円程度が一般的なのに対し、国産の水素ステーションでは1億3千万円もかかる。もうひとつ、圧縮した水素を保管するタンクは欧州1千万円に対して国産6千万円で、コスト増大の要因となっている。

欧州より国内の安全基準が厳格なのが背景にあり、1カ所当たりの建設費は全体で4〜5億円。ガソリンスタンドの1億円を大きく上回る。大阪ガスの関係者は「ステーションの建設費を下げるためには、利用するFCVの普及も進まなくてはいけない。ただ、どちらも高額なので良いサイクルが生まれにくいのが現状だ」と打ち明ける。

また、高圧ガス保安法に基づき、燃料ディスペンサー(補給器)と公道との距離は6メートル以上と定められており、4メートル以上のガソリンスタンドよりも広い敷地面積を求められる。さらに運転手が自ら水素の補給ができず、水素ステーションのスタッフが補給する必要があるなど規制が多い。
(略)
外市場でもFCVを普及させるため、安全基準を統一できるように経済産業省が各国と交渉することなどが盛り込まれている。水素ステーションについても水素の配管や保管タンクの材質や、立地の規制緩和を進める方針を示している。
(略)

私もマァ、だいたい同様の理由で燃料電池車の将来性に疑問を感じているのですが、ひとつ気になったのが「安全基準」の件。
かなりノーテンキに燃料電池車の未来を予想する『プレジデント』の記事にはこう書かれているのです。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140701-00012896-president-bus_all&p=1

日本が勝つか?「燃料電池車」覇権争奪レポート【2】
プレジデント 7月1日(火)14時15分配信
(略)
特にFCVの場合は、水素の爆発を防ぐために厳しい安全基準が求められる。基準を獲得するには、何度も実証試験を繰り返し、起こりうるあらゆる状況のデータを蓄積する必要がある。集めたデータをもとに標準規格のドラフトを作成、海外メーカーに示して“仲間づくり”を進め、公的な標準化機関に提案して、賛成多数による採決で承認される必要がある。

標準化への勝利に向かって、各メーカーは必死になって道を模索しているのだ。

日本は早くから水素の成分やタンクの耐久度、水素ステーションでの充填時の圧力など、数十項目にのぼる実証試験のデータを蓄積してきた。その結果、13年6月に日米欧など33カ国・地域が集まった国連の会議の場で、日本が提案した4つの安全基準が全会一致で採択された。車が衝突しても水素が漏れ出さない仕組みや、タンクに高低の圧力を繰り返し2万回以上かけても変形しない耐久性……などが柱になり、国際標準化の初戦では日本の進んだ技術が世界的に認められた。

今後、日本案が正式に国際標準として承認されると、日本メーカーは国内仕様のまま、海外に輸出できる。輸出先の国・地域に合わせて仕様を変える必要がなくなれば、日本は海外メーカーに先駆けて量産体制を確立しやすくなり、FCVの市場開拓で一歩先んじることが可能となる。
(略)

産経の記事は、欧州に比べて日本の安全基準が厳格なのが高コストの原因であり、普及を阻んでいるとしていますが、一方で『プレジデント』は日本の安全基準が国際標準になりつつあるという。
どっち?
「どっち」と言えばどちらも正しく(産経は水素供給インフラの安全基準を、プレジは自動車自体の安全基準を言っている)、色々と過渡期であるが故の混乱なのでしょうが、先々どうなるのやら見通しが立たないと不安のほうがやはり先立ちます