「機動戦士ガンダム モビルスーツ最強図鑑」

機動戦士ガンダム モビルスーツ最強図鑑

機動戦士ガンダム モビルスーツ最強図鑑

正月休みの時間つぶしにコンビニで購入した。

「グレートメカニックDX」誌のイラストを転用してこしらえた簡易生産型で、そのためMSのラインナップが微妙に変。一年戦争とは無関係なカプールや、素のイフリート等の超マイナー機が載っている一方、ザクマリナー、ガーベラテトラは無し(転用できるイラストが無いため)。

解説文は作品内の描写と「スラスター推力」等のナンセンスな後付け設定がごちゃごちゃで統制がとれていない。輪をかけて酷いのがデータで、推力どころか全高等の基本スペックすら掲載しておらず、「登場作品」「所属」「タイプ」「実力」の4項目のみ。「登場作品」は代表作だけ(「初出」ではない!)、「所属」はジオンか連邦のどちらか(ジムクゥェルのみ「ティターンズ」)、「タイプ」は表記の基準がバラバラ、「実力」は全く意味不明。まともなデータを載せると校正の手間が増えるから、間違いようのないヌルいデータ2項目と、どうとでも書きようのある2項目でお茶を濁したのだろう。それでも明らかな間違いが多数あるから目も当てられない。

「この本は初心者向けだから」と言い訳するかもしれないが、そういうコンセプトならば最低限「登場作品」の記載は細かく厳密であるべき。ただの手抜きなのは明らかだ。初心者向けではなく、編集者が初心者なのだろう。

ただ、森下直親氏のイラストはいずれも見応えがあるし、MS紹介のイラストはフォーマットを統一して描き直したもの。アニメの設定画だと作品ごとに画風やアングルが異なるが、この本の場合は例えばジムスナイパーカスタムとスナイパーIIとが並んでいても、同系統のMSだとすんなり受け止められる。絵に関しては誉めておきたい。

兵器(イラスト)は優秀、兵隊(ライター)個々の力量もおそらく低くないが、無能な司令部(編集部)が台無しにしているという旧日本軍のような一冊。ただ、税別600円なのだからこの程度の安い内容で当然だろう。コストパフォーマンスはさほど悪くない。



〈以下、マニア的なうるさい指摘を切り離しておいた〉

「登場作品」は漏れだらけで、たとえばゲルググズゴックは「機動戦士ガンダム」のみ、「他」を添えるような言い訳すらしない。また、出自がMSVであっても「Zガンダム」に登場したMS(たとえばジムキャノン)は「Zガンダム」他という記載。没メカのアッグやMS-XシリーズまでMSV扱いするなど間違いも多い。「所属」は連邦かジオンしかないから元より無意味だし、数少ない例外であるカプールの所属を「ジオン公国」としている。「タイプ」は正しいとか間違いとかいう以前に、「量産型」「現地改修型」などの生産区分と、「陸戦用」「水陸両用」といった使用環境と、「局地戦用」「長距離支援用」などの兵科がごちゃ混ぜだから参照のしようがない。グレメカライター陣が付いていてどうしてこうなった。