「性癖」はいつから「性的嗜好」「変態性欲」と同義か・続

以下、2007年9月8日付(http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20070908)のコピペ。

このところ「性癖」という言葉を意味ありげに使う人が少なからずいて、聞いてる(or読んでる)こちらのほうが恥ずかしくなる。いやまったく、「性癖」は一体いつから「性的嗜好」「変態性欲」と同義になってしまったのだろう?
サラッと三省堂大辞林 第二版」を典拠とするgoo辞書で「性癖」を引くと、『性質の片寄り。くせ。「誇大妄想の―」』とある。辞書的には性的嗜好の意味はまだ定着していないと言えそうだ。一方、Wikipediaには補足的に『21世紀初頭ごろから、性癖の語が性的嗜好と同義に使用され始めているが、これは「性癖=性的な癖」との誤解に基づいた誤用である。』との一文がある。んー、カバーしているのはさすがだけど、欲を言うと「21世紀初頭ごろ」に「要出典」を振りたいところ。
ものの順序を考えてみる。語義を誤解しているのは、「性癖」という語の存在よりも前に、多様な変態性欲・性的嗜好のことを知っていた人だとみていいだろう。後から知った「性癖」の字面に、そうした知識を当てはめてしまった、と。
普通に社会生活を送っていて「性癖」がボキャブラリーに加わるのは何歳くらいなのか、なんてデータはないだろうが、要するに現代(ウィキペ説でいえば「21世紀初頭ごろ」)は、その語(というか字面)よりも先に変態性欲・性的嗜好の多様性に出会うくらいに、セックスの情報がオープンになっている、とはいえるだろう。
だから、時代の風俗(←これも微妙に扱いにくい言葉だよね…。広義の風俗と、風俗営業法が定義するところの風俗と、さらに狭い意味ながら最も使用頻度が高いであろうセックス産業の風俗と、どうにか別の語にならないかしらん)を単語の変化で捉えるには、新語・流行語だけでなく、語義の変化を追うことも意義あるものと思う。

先日、何となくファミリー劇場で放映中の「江戸川乱歩シリーズ」(天知茂明智小五郎に扮する2時間ドラマね)を視聴していたところ、出てきましたよそっちの「性癖」。SM趣味があった被害者についての手がかりを追う中で、「大人のオモチャ」屋の店主が口にしました。

この「妖しい傷あとの美女」はシリーズ第24作、1985年の作品。同年に天知茂が急逝し、次の「黒真珠の美女」が遺作となりました。というわけでWikipediaにある「21世紀初頭ごろから、性癖の語が性的嗜好と同義に使用され始めている」は間違いで、80年代中盤に既にテレビドラマ、それも俗受けする作品の台詞に使われる程度に、そっちの意味で通用していたと言えそうです。