/五島勉以前のノストラダムス#5

五島勉の『ノストラダムスの大予言』が世に出る以前にも、ノストラダムスの予言に関する言及は意外とあった……という不定期シリーズ、3年ぶりで第5回です。別に積極的にネタを探してるわけでないので〜。

第1回は1968年版『妖怪人間ベム』の絵コンテに「ノストラダムスの光」なる言葉が書かれていたことを取り上げ(2007年3月28日付)、第2回は『ウルトラセブン』(1967年)の没脚本に 「今日この事態を四百年も前に予言した人がいるんだぜ。 (略) 「その日、天から恐ろしき力持つ王現われ、世界を支配するようになるであろう。まがまがしき犠牲か、おどけふざけを見るであろう。死人が墓から現れてくるだろう……」 (略) ノストラデーマスは第一次世界大戦第二次世界大戦、それだけじやない、日本に原爆が投下されることまでピタリと予言してるんだ」 という台詞があったことを取り上げました(2007年11月25日付)。

前者はなんとなくオカルトめいた単語というだけですが、後者は詩と合わせてはっきり預言者として描写されています。

戦後間もなくか遅くとも50〜60年代には作家・黒沼健がノストラダムスの予言を日本で紹介したらしく(2010年8月22日付)、1971年刊の児童書『なぞ驚異 世界のなぞ 世界のふしぎ』も「世界最大の予言者」ノストラダムスを紹介しているから(2010年8月16日付)、実は五島勉以前にもノストラダムスは割と知られた存在だった……と思えるのですが、その一方、1968年刊のオカルト本『世界の奇談』は未来予知に一章を割きながらノストラダムスには全く触れてなかったりします(2013年1月5日付)。

と、ここまでがおさらい。今回取り上げるのは先日日本映画専門チャンネルで放映された『吸血鬼ゴケミドロ』、製作年は1968年。ウィキペディア吸血鬼ゴケミドロ」の項にこう書かれています。

公開時の宣材では、「演出の言葉」として、佐藤肇監督の次のような言葉が添えられていた(原文ママ)。
ノストラダムス(フランス16世紀の大予言者)の不気味な四行詩は、1999年に地球は滅亡すると予言している。《この年、恐るべき王が、空から舞い降りてくる》 原爆以来、空飛ぶ円盤の目撃例は、増加している。地球は狙われているか!? 地球滅亡の24時間を、現代日本を代表する十人の人間どもの典型を極限状態に追い込むことによって描いてみたい。」

五島勉以前のノストラダムスが決して珍しくないことは上に書き連ねたとおりですが、この記事で目を引くのが「1999年に地球は滅亡する」との予言。

黒沼健は、ノストラダムスが予言した世界の終末は紀元7000年だと何度も書いているんですよ。1999年の予言については以下のとおりです。

ここで四行詩は一躍一九九九年の世界に飛ぶ。
「この年、恐るべき王が空から舞い降りてくる」
(略)
筆者には別の解釈がある。「空から」といい、特別な「言葉を話す」というのは、地球外の生物が「空から」やって来るのではあるまいかというのである。
(略)
この「空から」の侵略者のためフランスが受ける被害は甚だしく、三月から十月までの間に全土は完全に荒らされてしまう。
(略)
こうして紀元三四二〇年には、フランス全土は荒涼漠々たる地と変わり果てる。

予言物語 (河出文庫)

予言物語 (河出文庫)

異星人が襲撃してくる、とは言うが1999年のうちに地球が滅亡するとは言っていないのです。

『なぞ驚異 世界のなぞ 世界のふしぎ』も「一九九九年には、宇宙から侵略者がやって来るが、地球人がこれを防ぐと予言」と書く。さて一体、『ゴケミドロ』の佐藤肇は何で「1999年に地球は滅亡する」という予言を読んだのでしょう?