「知らないから似ない」は「知っていて似せない」ではない

付録のジャイロゼッター「クージャ」のカード目当てで『最強ジャンプ』4月号を購入。既存のカードの絵柄違いやパラメータ違いではなく、自機そのものがこの付録限定なのだ。
高いものでなし、買って後悔はしていないけど……それにしてもこのデザインは酷い。

集英社最強ジャンプ』4月号p47)
デザイナーはマンガ版の「超速変形ジャイロゼッター」を手がけている水野輝昭。よく言えば「既存のロボや車のどれにも似ていない」だけど、これはむしろ「ロボをカッコよく見せるバランスやディテールを知らない」「車のデザインを知らない」だよね……。
なんだろうねこの、おしめを付けてるような腰のボリュームとか、そのせいで足が短く見えるとか、そもそも股関節の位置を意識していないとか、肩のボリュームに負けてる胸部ブロックの大きさとか(カード絵では肩のボリュームが控えめになってますが)、どこからどう曲がっているかわからなくて不安になる右腕とか……(これもカード絵ではちゃんと自然に見える)。
カーモードは何といってもフロントの開口部がスゲェ。こんなに広く口を開けているのに中央部だけ閉じてるとか、普通に車を知ってる人には絶対にできないデザインだよ。ボンネットの先端が左右のライトより前に飛び出て、そのうえナンバー取り付け部分が逆「く」の字状にえぐれているというか下あごが出ているのも意味不明。リアエンドの絶壁なんだか逆反りなんだかの処理にも不安をかき立てられる。真後ろから見ると逆台形になるように見えるんだけどどう絞り込んでいるんだろう? なんというか全体に、デザインの意図が理解できない。
以前に書いた単行本の感想では、

小器用にマンガの絵が描けるから、その延長でメカもなんとか描けているけど、線の多いロボを間違えずに描くだけで精一杯、という感じだ。「ロボとかクルマとか根本的に好きじゃないでしょ?」と問いたくなる。
http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20120808

と評しましたが、一年も連載続けていて未だにそこらへんが身についてないというのは問題では……。それどころか、マンガ本編のほうは絵が荒れまくりで「小器用にマンガの絵が描ける」というフォローさえできなくなってます。
複数の連載を抱えているくせに別名を使ってまで他社で「ダンボール戦機」の外伝を描いちゃう武井宏之とか、ジャンプの手駒にはもっとロボ向きの人がいるじゃないの。なんで水野輝昭を起用したんだろう? と改めて思う。



青ベースで黄色く「V」が付いているから「デジモン」のブイドラモンを思い出して、「Vジャンプ限定だからか」と思いそうになったがこれは「最強ジャンプ」でした。



ちなみに先々月の付録カード「BEEMAN500 SS(ソロスペシャル)」は鳥山明デザインで、これはもう見事というほかない仕事でした。ジャイロゼッターって実は「変身」だから、カーモードとロボモードとで各パーツの大きさとかが変わっていたり、パーツが消えたり現れたりしてもいいのに、律儀に「変形」できるようにデザインしてます。そもそも「ゲーム用のオリジナルのロボ&車のデザイン」というオーダーに対して1人乗りの小型トラックで応えるあたりがやっぱり只者ではありません。