実写版ドラえもんは誰にでも面白いか?

出がけに観ていた『とくダネ!』というニュースショーで、トヨタのCM、実写版ドラえもんの新作を取り上げていた。アピールポイントは、20年後のジャイ子を演じるのが前田敦子、というミスマッチの可笑しさらしい。
ところが小倉智昭にはそこがわからなかった。
「成長してちょっと細くなったジャイ子って、前田敦子のイメージどおりだよねぇ。どこがミスマッチ?」
……ではなく。
小倉智昭はそもそもジャイ子を知らなかったのだ。前田忠明も同様、さすがに「ドラえもん」は知っていたが、ジャイ子は知らなかったという。
そこで私が抱いたのは、「果たして「ドラえもん」とは、どれくらい人々に知られた作品なのだろうか?」という疑念である。
先の東京モーターショートヨタのブースには「至るところにドラえもんがいて、トヨタブースはドラえもんハウスなんて揶揄されたりもした」という(「ベストカー」2.26号p84)。それについて自動車評論家ピーター・ライオンは以下のように書いている。

ところで、多くの海外メディアが理解できなかったのは、トヨタのブース・デザインと内容だった。「何、これ? フロアに人工芝生みたいなものを敷いて、数多くのアニメのキャラクターをぶら下げて、ブースの真ん中にピンクのドアって!?」
そう、日本人にはおなじみのドラえもんだけど、コミケじゃなくてモーターショーに来るジャーナリストには通じなかった。
「日本を代表するトヨタがこんなブースを出すなんて、ちょっと恥ずかしいね」とイタリアの同僚がつぶやいた。ドイツの有力ジャーナリストも、「あの青いロボットは、有名なアニメの何か主人公のようだけど、僕らに全然わからないな。欧州では新車の宣伝にアニメのキャラクターは使わないからね。こういうブースのデザインは国内ショーならわかるけど、国際的なモーターショーにはふさわしくないだろう。僕の同僚はみな、おかしいと言っているよ」と語った。
(「ホリデーオート」2月号p125)

思えばジャン・レノの起用も、二等身の青ダルマを知っていればこそ、「ハリウッドスターが特殊メークも着ぐるみも無しに演じる」ことに意外性とインパクトを感じるのだ。その前提が無い人にはただ青い服を着て帽子を被ったジャン・レノだろう。関係者は果たしてその「わかってない人の目」がわかっているのだろうか?

こうした指摘に対して、「ドラえもんを知らない層は元よりターゲットでないし…」とか「ドラえもんを知らない? 知らないほうがどうかしていますよ」と返すようでは、悪しきオタクの同類である。自らの視野を狭く閉ざしている。

深夜アニメなど、小さなターゲットに向けて単価1万円以下の商品を売るコンテンツビジネスならそれでいいが、「コンテンツ自体は商品でなくただのアイキャッチで、売るのは100万円超の車」というビジネスにおいて、この広報宣伝展開は、果たして妥当なのかと疑問に思う。
(↓続く)