/ガンダムvsガンダム

機動戦士Zガンダム』の第1話は「黒いガンダム」といって、ガンダムが敵方として登場することをサブタイトルからアピールしていた。ストーリーは無印『機動戦士ガンダム』をなぞり、「シャアがガンダムの調査のためサイド7に潜入する」というシチュエーションは同じくしながら、シャアは主人公側、ガンダムは敵側に入れ替えた逆転が面白味だった。

周知のとおりガンダムMk.IIはエゥーゴの手に渡り、白く塗り替えられるわけだが、ここで不思議なのは「黒いガンダムvs白いガンダム」という見せ場を作らなかったこと。エンタテイメントのけれんみの否定が「リアル」だという誤解があった時代ではある。しかし『Zガンダム』にしても、「二機を一機に見せる作戦」とか「モビルアーマーが変型した!?」みたいなバカらしくも娯楽性の高い描写を欠かさなかったわけで、なのにどうしていかにも盛り上がりそうな「ガンダムvsガンダム」をやらなかったのか。

当時は「ガンダムvsガンダム」という発想は全くの埒外だった? そんなはずはない、3年前の『戦闘メカ ザブングル』第1話のラストはまさにザブングルvsザブングル。これは「主役メカが複数存在する」という「パターン破り」の方針から生まれた場面だが、ともあれ主役メカvs主役メカは既にやっていたのだ。どうしてガンダムでそれをと思わなかったのだろう。

ドラマの側面からいっても、同じ機種でカミーユとジェリドが戦うことで、カミーユのNTとしてのポテンシャルの高さなり、ジェリドのパイロットとしての技量の低さなりを描写できたはずなのに。

(Mk.II対サイコにはまた別の背景があるので……。かつての愚考の全文はこちら→「80年代ロボットアニメの象徴、サイコガンダム」)

旧ポピーのエライ人が(村上克司、覚えたよ)往年のヒット作、大鉄人17を下地にした新ガンダムを提案する。当人はもちろん、主役ガンダムのつもりでの提案だった。

その、あまりにも宇宙世紀の世界観からかけ離れた、そしてどうにもカッコ悪いデザインは、Zガンダムとして採用されることはなかったが、いかなる事情があってかサイコガンダムとして番組に登場することになった。しかしその異世界のデザインを活かすためか、全高40mというそれまでのガンダム世界の常識からかけ離れた設定になってしまう。結果できあがった映像は、「巨大ロボットが、主人公側のこまごました攻撃をものともせずに、世界を破壊し尽くす勢いで暴れまくる」……。これはあるいは、何かを暗示しているのかもしれない。




てなことを、先日チャンネルNECOで始まった『魔法少女プリティサミー』を観てたらふいと思ったのでした。ちなみに第1話のサブタイトルは「サミー大地に立つ!」。
(続く→http://d.hatena.ne.jp/UnKnown/20110815