あたらしいみかんのむきかた

週刊少年サンデー」を読んでいて、強く目を引いた広告。

これは児童書の体裁だから、ふつうに考えたら読者層がサンデーと重なるはずがないのだが、そこであえて出稿するあたりに自信のほどがうかがえる(まぁ自社広告だからロハなんだろうけど)。
「きみは、ただ むくだけで まんぞく なのか…!」というシンプルかつ挑発的なキャッチコピーも実に巧く、まんまと乗せられた私は本日さっそく購入した。

あたらしいみかんのむきかた

あたらしいみかんのむきかた

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よーするに、みかんの皮を何らかの形に見えるようにむく、そのノウハウ本。それだけきくとバカバカしいと思われそうだが、いずれの作品も実に手が込んでおり、精緻で見ごたえがある。

中身はこんな感じ(無断転載とかの面倒にならないよう、amazonでもみられるページにした)。「みかんの皮という身近なものを素材とし、はさみとカッターしか使わない新たなクラフト趣味」とでもいおうか。実際に私がやったもので見せたいところなのだが、あいにくみかんが調達できなかった。
この本が紹介する25のむき方以外の「自己流」や「新作」を生み出す余地は十分にあるし、むく前の状態を「さて、これは何の形になるでしょう?」とクイズ風に見せることもできるから、動画投稿サイトでも披露できそうだ。これ、けっこう流行るんじゃないの?
また、この種のノウハウ本・入門本はただ単にやり方を紹介するだけで終わりそうなものだが、この本はとくに意味無くストーリー仕立てになっている。実際の話、むき方だけ紹介すれば十分なはずなのだが、無意味に熱いストーリーには文字どおりナンセンスな味があって、これが中々に可笑しい。
たかが皮むき、されど皮むき。「実物の扁球を用いて展開図を作成する作業」なんて言い出せば、これはもう幾何学の範疇だ。「日本的な『見立て』の文化を背景にした、新世代の影絵的もしくは切り絵的表現」てな調子で文化史の俎上に載せることだってできるぞ(著者もあとがきで、こうしたことに触れている)。みかんの皮むきが流行るかどうかはともかく、今後この本が話題になるのは間違いないだろう。

※以下、コメントを受けて11/24追加。一本目はamazonで見られるのと同じ動画ですが、もう一本、TVCMを意識したのか30秒に収めたものもありました。


新聞への広告出稿もあったそうですし、版元も結構力を入れているでしょうか。

あ、それと蛇足ながら一言。

「食べ物で遊ぶな」

と子供のころ両親や祖父母に言われませんでしたか?

お前はみかんの皮を食べるのか?