小惑星衝突はイコール都市壊滅、ではない

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090306-00000518-yom-sci
「都市一つ壊滅したかも」小惑星あわや激突…豪学者が観測
3月6日12時4分配信 読売新聞

ブリスベーン=岡崎哲】3日未明、直径30〜50メートルの小惑星が地球の近くをかすめていたことが、オーストラリア国立大学天文学者、ロバート・マクノート博士の観測で分かった。

最接近時には地球からわずか約6万キロの距離で、博士は「衝突していれば1都市が壊滅するところだった」としている。

地元メディアによると、同博士は2月27日、200万キロ以上離れた宇宙空間に時速3万1000キロもの速度で地球に向かって来る未知の天体を発見し、軌道を計算したところ、太陽の周りを1年半かけて公転する小惑星だった。この小惑星は3日午前0時40分(日本時間2日午後10時40分)に地球に最も近づき、その距離は、月との距離(約38万キロ)の6分の1弱に当たる約6万キロだった。

この小惑星の大きさは、1908年にロシア・シベリアに落ち、2000平方キロの森を焼き尽くしたものに匹敵したという。

はい、ここで問題。
「地球の表面のうち、陸地が占めている割合は?」
「その陸地のうち、人間に居住可能な土地の割合は?」
「その土地のうち、都市と呼べる規模の集落の割合は?」
「さて、仮に小惑星が地球に衝突したとして、海に落ちず、高山や砂漠にも落ちず、狙い済ましたように都市を直撃する可能性は何%?」
答は聞いてない。
 
おそらく天文学者氏のもともとの説明は「小惑星の速度は○○、大きさから推定される質量は○○程度であり、試算されるエネルギー量は○○。仮に衝突したなら、大気の抵抗による減速と、摩擦熱で燃焼する分の質量を差し引いても、1908年のツングースカ事件に匹敵する爆発となった可能性がある。それはわかりやすくいうと、都市ひとつが壊滅する規模である」くらいだったんじゃないかね。

いや、下手をすると、こんなやりとりだったのかも。

「この小惑星の大きさは、1908年のツングースカ事件の原因とみられる天体に匹敵すると考えられます」
ツングースカ事件? なんですかそれ」
「ロシア・シベリアに小惑星が落下し、2000平方キロの森が焼き尽くされたという事件です」
「ほう、2000平方キロの森が。それがもし都市に落ちたらどうなります?」
「1都市が壊滅するところでしたね」
「なるほどなるほど、つまり『衝突していれば1都市が壊滅するところだった』と

小惑星衝突、イコール都市直撃!! と安易に短絡させて、センセーショナルに書くのもマァ関心を呼ぶにはいいかと思うけど、その短絡に気付かない読者が少なくないのだから、やはり問題ではなかろうか。
(→この話題に関するブログ)
イエローペーパーならともかく、天下の読売新聞が世間の不安をムダに煽るような記事を載せてもいいのかと大いに疑問である。
まぁなんだ、メディアリテラシーって大切だよな、というお話。



などと偉そうに書いているけど、今回これを書くにあたってウィキペディアを参照するまで、ツングースカ事件は地表に隕石(か何かの天体)が激突したものだと思ってました。「上空で起こった天体爆発」だそうな……。
(「ツングースカ大爆発」出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』)