ウルトラマンレオ第33話ウラ話

ウルトラマンレオ第33話はサブタイトルを「レオ兄弟対宇宙悪霊星人」といい、レオの弟アストラの登場を強くアピールしている。だが、実は本来はアストラの登場は予定されておらず、登場しないバージョンのフィルム編集も9割がた終わっていたという。
 
この時期、「ウルトラマンレオ」は視聴率の低迷と戦いながら様々な試行錯誤を繰り広げていた。初期のスポ根&特訓路線から大転換をはかり、怪奇物に材を取ったり(第17-21話)、「ウルトラ兄弟」を再構築すべくアストラ(第22話)やキング(第26話)を登場させたり、「ウルトラセブン」のアンヌ隊員(っぽい人)を登場させたり(第29話)、第9話の設定を反故にして友好的な宇宙人を出してみたり(第20話、23-25話)、伝統の「日本名作民話シリーズ」をやってみたり(第26-32話)……。
 
これらの中でターゲット層からの反響が最も大きかったのが、やはりというべきか、アストラの登場であった。TV局や小学館の学習雑誌等を通じて、子供たちの反響の声が円谷プロに届く。よし、ならば1話でも早くアストラを再登場させよう。だが、再登場を決めた時点で撮影中だった第34話は新マンゲスト回。ボール怪獣セブンガーという味方も登場するため、このうえアストラは出しづらいし、出す必要も無いだろう。
 
そこで、既に編集中だった第33話にねじ込むことにした。とはいえ限られた時間で追加撮影できるのは、レオとアストラがタッグを組んでアクマニヤ星人と戦うほんの数分ぶんがせいぜい。ましてまともに再編集をする時間があるはずも無い――。
 
かくして、冒頭から戦闘シーンの途中までアストラとは一切無関係に、一言の言及も無く話が進んでいたのに、クライマックス直前でレオが不自然に苦戦し始めたかと思うと、唐突にアストラが飛来し、数分ほど戦って必殺の兄弟合体光線を披露したら、また全て謎のまま飛び去るという、ストーリーの整合性もへったくれもない回になったのだった。



……というのは何の根拠も無い、ただの憶測。
でも、実際に「レオ兄弟対宇宙悪霊星人」を観たなら「ああ、そういう事情だったのか」とうっかり信じちゃうでしょ? 理由はどうあれ、当初はアストラの出番は無かったのはまず間違い無い。つか、当初からアストラがゲストと決まっていながらあんな話にできるのなら、それはもう逆に尊敬に値するわ(笑)。
なお、新マンがゲストの第34話の後は1話挿んで再びアストラが登場、さらに1話挿んで「レオ兄弟対ウルトラ兄弟」というビッグイベントの前後編で、何はともあれこの回は「兄弟」路線強化の幕開けとなったのでした。