ありふれた街の写真集

なんか21日付へのアクセスが大変なことになってるけど、いつもの調子で。先日、虎ノ門の書原という書店に寄った折に購入したなかの一冊。

背景ビジュアル資料〈2〉団地・路地裏・商店街

背景ビジュアル資料〈2〉団地・路地裏・商店街

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名目上は漫画用かイラスト用か、「背景ビジュアル資料」と資料写真集であることをうたっている。実際、巻頭ではトレースやマットペイント合成のテクニックを解説しているのだが、この本はむしろ「日本中どこでも見られる、古くさく薄汚れた、けれどレトロというにはまだ少しだけ新しい街並」の写真集として価値がある。
日本各地の団地、路地裏、商店街、市場、映画館……。こうしたありふれた風景に、あえてカメラを向ける人は少なかろう。だが、やがてそのうち、いや、もう間もなくこれらも「懐かしい風景」になる。この写真集はそれを先取りした。今はまだ誰も価値を認めていない風景を、今この時に記録し、一冊にまとめているのだ。執筆者もそれは意識しているようで、タイトルと巻頭部分こそ資料集の体裁だが、巻末の撮影地情報は観光ガイド的にまとめられている。
ひととおり見終えて思うのは、昭和30年代村(参考:2005年12月21日付エントリ)のようなテーマパークと違って(ってまあ昭和30年代村は未完成だし厳密にはテーマパークではないし、もちろん行ったこともないけれど)、「古くさく薄汚れている」ことが案外と重要なポイントではないか、ということ。そこにはリアルな生活の実感と、積み重ねてきた月日の厚さを感じさせるものが確かにある。