四月バカで決まる?新市名

今朝の東京新聞にこんな記事が掲載された。

【沖縄に「幻の新島」 タヌキ置物古里か】
地震頻発で再浮上」 「江戸時代に海に沈む? 古地図に記載『再隆島』」、海中で撮影されたタヌキの置物の写真とともに「『泡盛の神様』海底から出土」 「地元に伝承 脱出の島民が常滑に伝える?」
(ウェブ上では【沖縄に「幻の新島」 地震頻発で再浮上】)

内容を要約すると、沖縄・与那国島近海の、かつて人が住んでいたが江戸時代に海没した島が、再び隆起した。そこから出土したのがタヌキの置物。タヌキの置物のルーツはこの島であり、海没の際に脱出した島民が常滑に流れ着いて、タヌキの置物づくりを伝えたと考えられる……という話だ。

これは実は冗談記事。エイプリルフールということで掲載されたものだが、冗談では済ませられない人たちもいた。

【「陶器の狸の元祖は信楽東京新聞に抗議】(砧新報 05/4/01 10:42)
要約すると、信楽(しがらき)の商工会議所が「タヌキの置物の元祖は信楽。沖縄起源説は冗談として受け入れられるが、なぜ信楽ではなく常滑なのか」と東京新聞に説明を求めたという話。東京新聞中日新聞だから愛知県に絡めたかった……という事情はさておき、言われてみれば確かに、タヌキの置物といえば常滑焼ではなく信楽焼のほうがはるかに有名である。

これだけならまだいいが、事は新聞社への抗議だけに収まらなかった。信楽町は近隣4町と合併して新たに市となるのだが、一度は「甲賀市」に決まった新市名を見直そうという動きが出てきたのだ(甲賀地域合併協議会www.kouga-gappei.jp/)。「タヌキの置物の元祖は信楽」という主張の込もった新市名は……
「たのしい陶器のタヌキ」と書いて「愉陶狸(ゆとり)市」

これを安易な当て字だとか、佐賀県で白紙になった「湯陶里(ゆとり)市」のパクリだとこき下ろすのは容易いが、それ以上に「なぜそこまで置物のタヌキにこだわるのか?」がどうにも気になった。そこで信楽焼のタヌキの歴史を調べてみると、やはりそれなりの理由があることがわかった。実に1200年以上もの歴史があったのだ。観光案内の解説文にこうある。

742(天平14)年、紫香楽(しがらき)宮造営のために森が切り拓かれ、狸などたくさんの動物が棲みかを追われました。すると、造営直後から争乱や災害が相次いで起こりだしたのです。これを狸たちの復讐だと考えた朝廷は2年後には造営を中止。さらに、土地を狸に返すという意味を込めて、陶器の狸を作るよう命じました。これが信楽焼の狸の発祥だと伝えられています。

これを「行き過ぎた開発を反省して自然との共存の道を選ぶという、現代に通じるメッセージ」云々と言われるとさすがに鼻白むが(つーか『平成狸合戦ぽんぽこ』の元ネタ?)、冗談記事といえどこの歴史をないがしろにされたくない、という関係者の気持ちはもっともだなと思う。