『クロスロード』

縁あって試写で観た映画。てなわけで仕事半分のタダ見だったんですが結構な拾い物でした。

フィリピンを舞台にして、青年海外協力隊の苦悩と奮闘を描くという趣向。基本、50周年の記念に青年海外協力隊をアピールするための映画なんですが、隊員たちや現地の人々を過度に美化せずリアルに描いています。まずね、主人公がダメな奴なのよ。将来に不安を持つ若手カメラマンで、途上国でならいい写真が撮れて有名になれるだろ、てな動機で青年海外協力隊に参加する(もっと色々事情はあるんですが直接の動機はそういうこと)。マァ訓練所でもボランティアの理想に燃える仲間に向かって「ボランティアなんて偽善だ」と公言してはばからない、ってのはさすがに人としてどうかと思うけどね。

んでマァそこはお約束のパターンで、やる気満々の隊員仲間との対立とか、現地の人々との出会いだとかを経てなし崩し的にボランティアを意識するようになるんですが、それでもやっぱりうまくいかない……というのが作品の肝となっています。世界遺産となったという棚田の風景も、鉱害のために苦しい生活から抜け出せない貧村も、等しくフィリピンの風景として描き出しており、そのあたりのビジュアルも見ごたえがありました。

とひととおり誉めはするものの、全体的な作りは荒っぽい言わざるを得ない(苦笑)。特に帰国する直前のクライマックスは「いや待て、それはさすがに無いだろ!?」とツッコミたくなる。ニコンD2Xは当時最新のデジイチで、ボディだけでも定価60万円って代物ですぜ? ここはむしろ、日本を発つ前に師匠と「奮発したな」「大事な商売道具ですから」みたいな会話を交わすなどして、あらかじめ印象付けると良かったかも(ツッコミどころを明示することでツッコミを回避するテクニック)。

あとなー。恋愛物展開がないのは基本的には歓迎なんだけど、あのヒロイン相手に全く恋愛感情を抱かないというのはさすがに不自然に見える。主人公はぶっちゃけ、えーと「そもそも性的嗜好が大多数の男性とは大きく異なる」(婉曲な表現)としか思えない。これはマァ「青年海外協力隊は品行方正、現地娘のつまみ食いなんてしません」と描かざるを得ないとの事情があってのことと理解するけどね。