「バットモービル大全」

さいたま新都心紀伊国屋で購入。

バットモービル大全 (ShoPro Books)

バットモービル大全 (ShoPro Books)

あなたがマニアでもオタクでも無く、「インテリアとして洋書が欲しいんだけど、洋書ってどこ行けば買えるの?」と思っているならば、この本はちょうどいいだろう。むろん邦訳されているが、なぁに横書きだから遠目にはわかるまい。そもそもインテリアなのだから何語だろうが同じだ。

だがあいにく私はマニアなので、厳しく評価せざるを得ない。一言でいって「何が大全だ、ふざけるな!」である。まさかアニメ版のバットモービルが一切載っていないとは思っていなかった。それどころかコミック版でさえ散発的に載っているだけで、キャプションは必要最低限以下。本文にはコミック版の変化が書かれているが、肝心のビジュアルがその内容に対応していない。そして64年でコミック版の話は終わってしまう! あろうことか実写版さえも、43年版、49年版の写真は一点も無し。もう一度言う。「何が大全だ、ふざけるな!」だ。

テキストもまわりくどくて要領を得ない。作品の話と、時代状況の話と、設定上の(あるいはシンボルとしての)バットモービルの話と、撮影用のバットモービルの話とが未整理のままゴチャっと垂れ流されている。細かな記述も変。リンカーン・フューチャラーが「見せるための車」だという意味を誤解しているようだし(見掛けだけの車という文脈で書かれているが、本当に「見せるための車」=ショーカーだった)、「パワーステアリングもついていなかった」をジョークだと理解していないフシがある(当時はパワステ装備の乗用車はごくごく少数)。

ただ、バートン監督の2作品に登場したバットモービルと、ノーラン監督作品に登場した「タンブラー」については記述が厚く、貴重な写真・図版も多数掲載している。予めそういう本だと理解したうえで買うならば「ああ、随分と高い買い物をしてしまったなぁ」とため息をつくだけで済むだろう。

我が家のバットモービルたち(1台はちょっと違うが)。このうち「大全」(自称)に載っているのは手前の3台だけだし、バットモービルのバリエーションはまだまだこんなものではない。