リアルタイプ新幹線

その大企業とはJR九州だ。ルーツをたどれば1990年頃、特急車両のカラーを通称「レッドエクスプレス」仕様に変えたことに端を発する。目に痛いばかりの真っ赤なボディ、そして正面と側面には白文字で"RED EXPRESS"。「そのRED EXPRESSってのは誰に何を伝えるための文字なの? つーかそもそもRED EXPRESSって何? 車両名でも列車名でもないでしょ?」と、山ほどツッコミどころがあるのだが、これはつまりレタリングに装飾としての意味が見い出された結果であり、文字列そのものに意味など無いのである。意味の無い装飾的としての文字列……。最初のガンプラ世代にはここで「リアルタイプ」仕様、機体に書かれた細かな「注意書き(ステンシル)」類を水転写デカールで再現した、あの商品を連想して欲しい。
ともあれレッドエクスプレスは好評を得て、以降「原色てんこ盛り」「装飾レタリング」はJR九州お家芸となる。塗装ばかりか、新型車両は車両デザイン自体も「ガンダム」と化していった。95年デビューの883系がそのピークで、「装飾過多、ガキっぽい、メカっぽい、力み過ぎ、虚勢」「「子供っぽさ」っていうのが絶対に必要」という定義がピッタリの車両である。
今年デビューの九州新幹線・800系つばめ号は、デザインや色使いはさすがに控えめだが、その分「誰に何を伝えるためでもない、装飾としての文字列」は逆にパワーアップしてしまった感がある。
蟻が行列作っているかのような文字列があちらこちらにあり、一体何が書いてあるかと見てみれば……。
"KYUSYU SHINKANSEN TSUBAME 800 SINCE 2004"
ぷっ。
なんかもう、どう意味が無いならいっそ"DANGER JET INTAKE"くらいやってくれと思ってしまう。
JR九州の車両デザインの特異性は広く注目を集めるところだが、自動車用語の「ガンダム」からアプローチした例はあまり無いようなのでここにまとめた次第。

コナミトレインコレクションS-006・800系新幹線。ディフォルメされた分、問題の文字列がぐっと詰まっていて有り難い(笑)。このクオリティで1000円は安いぞ。