最近読んだマンガ

一時期はタイトルだけでも列記していたのが止まってしまってもう半年以上過ぎた。
とりあえず最近読んだマンガってことで。
 

高橋聖一のよいこのSF劇場 (ビッグコミックス)

高橋聖一のよいこのSF劇場 (ビッグコミックス)

イデアは中々に凝ったものをよく練りこんでおり、そのうえ勢いがあるから読んでいる間は引き込まれる。だが、読み終えて何も残らない。悪意や屈折、冷笑、皮肉が足りない。まるで足りない。だから可読性を阻害しかねないほど無駄に密度が高い割にスカスカの薄味。
 
足摺り水族館

足摺り水族館

kashmir(かしみーる)の漫画から百合要素を引くと当世風つげ義春というかモダナイズド諸星大二郎になるんだなぁと思ったのが「てるみな 1―東京猫耳巡礼記」。その「てるみな」からマニアックな鉄道ネタを引いて、画風というか手法を独特なものにすると「足摺り水族館」になるのでした。いや、あくまで例えであって「てるみな」も「足摺り水族館」もそれぞれ優れて独創的の作品なのでその点誤解なきよう。
技術でなくセンスで描かれているマンガなので、これはスゲーや面白いわと思うものの、他の作品はどうなんだろうねとフイと冷めてしまう。装丁は素敵なんだが、経年劣化でビニールが縮むのが心配(本棚の保育社文庫に目をやりつつ)。本体のデザインも凝っていて、それは確かに魅力ではあるのだが、カラーページの写真に関しては加工するにしてももうちょい見やすさ優先のほうがいいのではと思わなくもない(『東京人』掲載の丸田祥三の過飾写真を思い出しつつ)。
 これも、モダナイズド諸星大二郎というか、「妖怪ハンター」をあまり良い意味でなくジャンプ的にチューンした感じ(「妖怪ハンター」もジャンプ漫画だけどね)。……文明開化と言われながらまだまだ迷信がはびこる明治時代、井上円了をモデルとする主人公が迷信打破を目指して啓蒙の戦いに奔走する裏側で、その助手は本物の霊能力者でもって実在する妖怪と戦っている……という基本設定は面白いんだけど、ストーリーがあまりにお粗末。それなりの取材に基づいて組み立てられているものの根本が少年誌のレベルだ。ブレイン無しで使いこなせる設定ではないだろうに、と思っていたら案の定というべきか、この先どうも異世界や妖怪が存在する前提のバトルものへと流れていく模様。そういうところが良い意味でなくジャンプ的。
 連載もまず好調だが、人気がある週刊連載マンガの単行本はそろえ始めると際限がないので、田所が頑張る3、4巻のみ購入。先日の「たまゆら」の感想で「楓はとてもお行儀の良い子として描かれているのに、どうして自分の父親のことを「お父さん」と敬称付きで言うのか」と書いた際、(たしか最近そこらへんが描写してあるキャラがいたよな)と思いつつも誰だか思い出せなかったのだが、

はい、田所ちゃんでした。
 事情は知らないが不本意な連載終了に追い込まれ、身受け先を探していたのが印象的なタイトル。三世で無いルパンが主人公、とは知っていたが講談社版は未読でそれ以上のことは全く知らず、書店でたまたま見かけて購入した。
第1話は正直いろいろと不安になる内容なのだが(読者に知らせておくべきこと・伏せておくべきことのコントロールが巧くいっておらず、「え? あれ? コイツがルパンだという前提で読んでていいの? でも、だとすると冒頭にも出てるこの連中との関係おかしくない?」みたいな疑問符が山と浮かぶ)、2話から先は大変面白いです。とくに終盤、ルパンvsガニマールの一対一の対決は、言ってしまえば会話だけなのに凄まじいばかりの緊迫感を描いている。おそらくルブランの原作から面白いのでしょうが、漫画の技量も相当なものです。