ケータイ捜査官7

先々週分と2話まとめて感想。
#17「遠い夏の空と」
8月だから太平洋戦争絡みの話かい。
「チャス・マッギルの幽霊」(『ブラッカムの爆撃機asin:4000246321収録)のかなり露骨なパクリ。元ネタの、鮮やかな反転による幕引きをそのまんま安易に引き写したら、ご都合主義的でいーかげんで放りっぱなしな「そりゃねーだろ」な歴史改変になってしまった。まぁ、こういう理屈無しのファンタジーもやってしまえるあたりに『ケータイ捜査官7』というタイトルの懐の深さを感じたりもするけれど。

ラストの「青々とした豊かな畑」などの日本の田舎風景への翻案や、コミュニケーションツールたるケータイ、そのケータイと並置される形見の品の貝殻といった小道具の使い方は面白い。時間を超えて電話がつながる話というと、「ファンロード」に載っていた満月吠の絵物語を思い出すが、そんなのは私ひとりだろう。

#18「URL」
夏だから怪談かい。
『ザ・ガードマン』か、はたまた往年のウルトラシリーズ仮面ライダーかとツッコミたくなるが、こういう理屈無しのホラーもやってしまえるあたりに『ケータイ捜査官7』というタイトルの懐の深さを感じた(この調子で「日本の童謡シリーズ」とかもやって欲しいものだ)。

ただし中身は論外。謎の連続失踪事件という導入はいいとして、何が起きているかよく判らないまま、その場その場のビックリシチュエーション(恐怖ではなくビックリ)をつなげただけでダラダラグダグタと続き、結局なにが起きたのかよく判らずに終わる、山無し・落ち無し・意味無しの展開。ああいうラストなら、クライマックスに向けて「実は全て合理的に説明できるトリックでしたー!」とひとたび解決させた上で、「え、でもここには誰もいませんよ…?」と最後で全てひっくり返してヒヤリ、というのがセオリーだろうに。

そのラストについては、「誰もいません」で終わらせときゃいいのに、「あの世からの通信だったんじゃ…?」なんてダッサダサにストレートな台詞を言わせちゃうセンスの欠如にも目を覆いたくなる。逆に、ケイタが内心では失踪者たちにシンパシーを抱いている、という描写は不足しており、取り込まれそうになったときの台詞が恐ろしく空々しかった。

次回から前後編で押井守監督回。『攻殻機動隊』からの流れでサイバーなアイデアに取り組んでくれるなら面白いかも、と思っていたが、いつもどおりの「TVシリーズにゲスト参戦する押井守」の作風になりそうで期待できない。

前回・今回、そして次回・次々回と、「冒険的な取り組み、実験的な内容、だけど本筋とは無関係な上に全く面白くない話」を続けられるのは正直言ってキツイぞ。休みを挟んでひと月以上だもんなぁ。

本当に怖い『怪奇大作戦』#7

一応の解決の後で、またひっくり返してヒヤリ、といえば思い出すのが『怪奇大作戦』第7話「青い血の女」。夜道をフランス人形が歩いてたかと思うと、突如仕込みナイフで襲ってくる、という絵面だけでも十分怖いんだけど、見所はやはりクライマックスだ。

人形は実はリモコン仕掛けでした → 犯人の居場所を突き止めて踏み込みました → 息子夫婦に冷たくされた老人が犯人でした で、事件解決めでたしめでたし……とすればいいものを、老人の背後には真犯人の「あれ」がいるわけですよ。

「あれ」は本当に怖い。なんだかブサイクで、たいした力があるわけでなく(それどころかほぼ寝たきり状態)、でも動機だけは充分にあって、その動機に対して忠実だから自決してお終い…っておいおいおい! なにこの幕切れ!? 理不尽、理解不能、なのにきちんと筋が通っているあたりが、ホントに怖い。

でも、その後のエピローグ部はある意味「あれ」よりもっと怖い。何が怖いって、SRI職員がそれぞれ好き勝手に「あれ」の正体を解釈して、わかったつもりになって、とりあえず安心ってところで、「あれは一体なんだったんだろう?」とまた蒸し返しちゃう牧さん(岸田森)の空気の読めなさが怖い(笑)。

いや冗談抜きで、解釈ができたつもりになれば、内心ではそれが間違いだと気付いていても恐怖が薄らぐものなのに、マッドにサイエンティストな牧さんはそういうのを許さないんだよね。周囲を非難するわけではなく、ただ本人の性分として、恐ろしくナチュラルに場の空気を凍らせちゃう。そこがかっこいいんだけどさ。